JIS X22989 原案作成委員会

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第3 種専門委員会

JIS X 22989 [情報技術—人工知能—人工知能の概念及び用語]原案作成委員会

<2022年度委員会活動報告>

委員長 杉村領一(産業技術総合研究所)

1. 経緯

AIの用語は第2次AIブームの折にX0028:1999としてJIS化されている。だが深層学習という新たな技術の登場に伴って第3次AIブームが到来し、新たな概念や用語が大量に使われるようになった。
これを受けてJTC1/SC42ではISO/IEC 22989 (Information technology — Artificial intelligence — Artificial intelligence concepts and terminology)を開発し、人工知能 (Artificial Intelligence) それ自体を含め様々な用語を新たに定義し、また従来用語を変更・拡張した。
国内でも同様に、深層学習の登場に伴い様々な用語が幅広い関係者により様々に規定され、少しずつ異なる意味をもって使われている。そこで概念を整理し用語に関して指針を与えることを目的に,本JISを制定するに至った.
当該規格の主な規定項目は,次の通りである.

A) 適用範囲
B) 引用規格
C) 用語及び定義
D) 略語
E) AI概念
F) AIシステムライフサイクル
G) AIの機能概要
H) AIエコシステム
I) AI分野
J) AIシステムのアプリケーション

2. 作業内容
2.1 作業中問題となった点

2つの用語について課題が出た.

①推論 
inference及びreasoningについてはともに“推論”という訳が充てられることが多いが,その場合,“推論”の定義が,“既知の前提から結論を導き出す推論”となり,定義の文中に定義する用語を含む循環定義となってしまう。また,両者を訳し分ける場合,原文に登場するBayesian inference 及び Bayesian reasoningが異なる表現となり,両者が同一の概念である場合,読者に混乱を与える。本件を人工知能学会に問い合わせたが,期限内には回答は得られなかった。そこで,両者の訳語として“推論”を充てつつ,丸括弧内に元の英語を示すことで,原文の記載内容を正確に反映することを試みた.

② トラストワージネス
訳語として,trustworthiness に何を充てるかが問題となった。a)と同様に,この委員会での閉じた議論では訳語が決められないため,“trustworthiness”については一般社団法人情報処理学会情報規格調査会 JTC1/WG13小委員会 への問合せを行った。策定当時,ISO/IEC JTC1/WG13 がtrustworthinessに関する規格を作成中であった。JIS化も予定されていたが,活動はまだ開始されておらず,訳語については将来の議論に任せることとした。これを受けて審議の結果,このJISでは,片仮名“トラストワージネス”とした。

2. 2 解説の事項

個々の訳語について,解説が必要と委員会で判断された用語は,知識,データセット等,15用語に上った.

2.3 対応国際規格の問題個所への対応

 対応国際規格に,3か所,明らかな間違いを確認したため,国際へ瑕疵報告をすると同時に,委員会にて,正しいと考えられる用語へ修正した.

3. その他

原案作成委員会は,ISO/IEC 22989 (Information technology – Artificial intelligence – Artificial intelligence concepts and terminology)が出版された2022年7月以降,2023年2月まで計9回の原案作成委員会を開催して作業に取り組んだ.実作業としては,これらに加えて,ほぼ毎週の作業打ち合わせも行う必要があった.取り組みをご支援いただいた原案作成委員会の委員の方々,ならびに,日本規格協会ならびに情報処理学会の方々には感謝したい.
 AIの進展は目を見張るものがあるため,次の国際の改定までには多くの変化があると思われるが,基礎的な用語と概念を規定するものとして利用が広がることを期待したい.
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