SC 24 専門委員会 (コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現)

第1 種専門委員会

SC 24 専門委員会(コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現/Computer graphics, image processing and environmental data representation)

<2022年度委員会活動報告>

 委員長 蔵田 武志(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

1. スコープ

 本委員会に対応する国際組織は,ISO/IEC JTC 1/SC 24であり,担当範囲は,以下に関する情報技術応用システムのための各種インタフェースを標準化することである.
・ コンピュータグラフィクス
・ 画像処理
・ バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)、ならびに複合現実(AR)(MAR: Mixed and Augmented Reality)
・ 環境データ表現
・ 情報の提示(可視化)と対話

ただし,以下の内容は除外されている.
・ マルチメディアの効率的な符号化

2. 参加国

   Pメンバは14か国であるが,ここ数年のSC 24総会に継続的に出席しているのは,米国,韓国,英国,オーストラリア,フランス,中国,日本の7カ国である.加えて,SC 24とSC 36とのJWGに関しては,フィンランドからも出席がある.議長は韓国(ミョン・ワン・リー:2016年に着任),幹事は英国BSIのジーン・ストライドである.日本はWG 9(複合・拡張現実連続体の概念と参照モデル)のコンビーナーを務めている.

3. トピックス

   SC 24では,これまで,画像フォーマットであるPNG,3DCGを記述するためのマークアップ言語であるVRMLとその後継のX3D,MARの参照モデルなどの規格化が行われてきた.近年,「メタバース」の注目度が高くなっている.言葉の起源は,1992年に発行された「Snow Crash」というニール・スティーヴンスンの小説であり,コミュニティが存在し経済活動や社会活動が営まれるバーチャル世界のことを指していると言ってよい.
   小説では,メタバースへの接続方法としてVRデバイスだけではなくARデバイスも用いられるが,メタバースでの活動自体は主にバーチャル世界の中で行われていた.Niantic社は,実世界での活動により着目し,ポケモンGOのような世界を「実世界のメタバース」(Real World Metaverse)と呼び,単なるメタバースと分けて考えようとしている.また,内閣府のバーチャルエコノミーに関する調査報告では,サイバー空間での価値をフィジカル空間に還流するバーチャルエコノミー形態およびそれにまつわる技術を「インターバース」と呼んでいる.用語の整理は今後も継続的に検討が必要であると考えられる.
Khronosグループ主導で2022年6月にMetaverse Standards Forumが設立され,多くの標準化団体も参加しているが,ISO/IEC/JTC 1はまだ参加をしていない.SC 24では,その活動や規格に対する産業界側の巻き込み推進が課題となっており,当該フォーラムへの参加検討を含め,メタバース関連の活動を進めることとなっている.

4. 日本対応/方針

   メタバースなどでの利用や流通が活発に行われている3Dアバターフォーマットの1つとしてVRMがある.これは,VRMコンソーシアムで開発されている日本発の規格である.将来的にデジュール標準化することも視野に入れ,SC 24で規格化されたX3D HAnim(Humanoid Animation)との関係の整理などの課題について検討を進める.
   日本主導で策定したビジョンベースの位置合わせ・追跡手法のベンチマーキングに関する規格(ISO/IEC 18520:2019)で対象とする位置合わせ・追跡手法はカメラを用いたものに限られる.そのスコープ外のベンチマーキング規格として,xDR(歩行者用や車両用の推測航法)に基づいた屋内LTS(測位とトラッキング)システムのベンチマーキングに関する規格提案の準備が,同じく日本主導で進められている.

5. その他

   SC 24では企業の委員が年々減少している.SC 24と関連が深いVR/AR/MRやメタバースといったトピックが国際的に盛り上がっていることもあり,産業界との連携促進が期待される.