JTC 1/WG 11(スマートシティズ)

第1種専門委員会

JTC 1/WG 11小委員会(スマートシティズ/Smart cities)

<2022年度委員会活動報告>

主査 伊藤 雅樹((株)日立製作所)

1. スコープ

 スマートシティにおいてICTを活用する際の規格開発の土台となる基礎的な規格を開発し,それらの規格上に,スマートシティ関連の規格を開発していく.これらの規格開発は,ISO/TC 268(持続可能なシティとコミュニティ)や他の標準化団体と協調していくことが重要である.

2. 参加国

 29ヶ国(オーストラリア,オーストリア,ベルギー,カナダ,中国,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,インド,アイルランド,イスラエル,イタリア,日本,韓国,カザフスタン, ルクセンブルグ,マレーシア,メキシコ,ロシア,サウジアラビア,シンガポール,スロベニア,南アフリカ,スペイン,スウェーデン,スイス,イギリス,アメリカ)
幹事国: 中国(Honwei Zhang),主査: 中国(Heng Qian)
日本はISO/IEC 30145-3とISO/IEC 30146で関洋平(筑波大学)がコエディタを引き受けた.

3. トピックス

 スコープに記載の「基礎的な規格」と位置付けていた,ISO/IEC 30145: スマートシティICT参照フレームワーク(Part 1: ビジネス・プロセス・フレームワーク,Part 2: 知識管理フレームワーク,Part 3: エンジニアリング・フレームワーク),ISO/IEC 30146: スマートシティICT指標,ISO/IEC 21972: スマートシティ指標向け高位オントロジーの5規格は,2021年5月までにすべて発行された.現在はプラットフォームやデータ・モデルの規格開発に注力しており,その最初の規格としてISO/IEC 24039: スマートシティ・デジタル・プラットフォーム (SCDP) 参照アーキテクチャが2022年6月に発行された.

a) ISO/IEC 5087: シティ・データ・モデル

 都市の構造や活動を表現するためのオントロジーを規定する.Part 1は基礎レベル,Part 2はシティレベル,Part 3はサービスレベル(交通計画).2023年3月時点でPart 1は出版準備中,Part 2はDISに向けて翻訳期間中である.Part 3は,日本からの提案に基づいてISO/TC 204とJTC 1のJWGに移管された.

b) ISO/IEC 5153: 公衆衛生緊急事態向けのシティ・サービス・プラットフォーム

 公衆衛生緊急事態向けの市のサービスのプラットフォームを規定する.Part 1はその概要と一般的要求事項で,2023年3月時点でDISに向けて翻訳期間中である.さらに韓国から感染症向けの追加パートの提案があったが,日本からの提案に基づいてISO/TC 304に移管された.

c) ISO/IEC TR 20169 スマートシティ標準化の概要

 JTC 1におけるスマートシティ標準化の方向性をまとめた白書(2022-05にWG 11がJTC 1総会に提出)を改訂してTRとすることが2022-11のJTC 1総会で承認され,開発プロジェクトが開始された.

4. 日本対応/方針

日本はスマートシティのような応用領域の規格はISOでの開発が最適であると判断しており,本委員会ではISOとWG 11で不整合が生じないように心がけている.特に2022年は上記の通りISO TCとの共同開発やISO TCへの移管などの成果があった.今後もISO, IEC, ITU-Tのそれぞれの国内委員会と本委員会が情報共有しつつ,JTC 1で特異な規格開発が進まないようWG 11に影響を及ぼしていく方針である.

5. その他

 ISO, IEC, ITU-T, そしてJTC 1のそれぞれがスマートシティに関する組織を持つため,作業の重複を避け,調整するためのタスクフォースを共同で立ち上げ,活動中である.また,ISO/TC 268/SC 1とJTC 1で作業を調整するためのAdvisory GroupもJTC 1内に設置された.そうした中,特に協力関係を柔軟に構築するために,JTC 1にスマートシティ向けITをスコープとする新たなSCを設置する提案が中国からなされた.本稿執筆時点ではまだ承認されたわけではないが,スコープや作業項目を丁寧に確認していく必要がある.