ソフトウェア及びシステム工学-ソフトウェア及びシステム開発における作業成果物のレビューのプロセスJIS原案作成委員会

第3 種専門委員会

ソフトウェア及びシステム工学-ソフトウェア及びシステム開発における作業成果物のレビューのプロセス JIS 原案作成委員会

委員長 西 康晴(電気通信大学)

1. 経緯

 システム及びソフトウェアの管理,開発,テスト及び保守に関わる作業生産物のレビュー作業は古くから積極的に実施されてきているものの,開発組織又は個人に固有の手法が使われてきた。近年,システムの活用は企業内にとどまらず,直接企業の顧客が利用し,また,組込みソフトウェアとして日常生活に不可欠な要素となり,品質確保のためにレビューの重要性はますます高まっている。このような状況において,シス要素となり,品質確保のためにレビューの重要性はますます高まっている。このような状況において,システム及びソフトウェアの開発に関与する全ての組織が使用できる標準的な作業生産物レビュー手法の規格は重要性を増している。国際規格でもこのような状況を踏まえ,作業生産物レビュー規格が ISO/IEC 20246として 2017 年に制定された(以下,対応国際規格という。)。このため,国内においても対応国際規格と整合性のある実態に即した作業生産物レビュー規格を JIS として制定することとした。

 レビュープロセスについて,国内では JIS はもとより,その他の規格に類する文書がなかったため,対応国際規格の開発に参画した情報処理学会規格調査会の SC 7/WG 26 のメンバ-を中核として JIS を開発するとともに,作業生産物レビュ-に関する日本語の用語を提供することも合わせて目指した。

 この規格は,主として,箇条 3(用語及び定義),箇条 5(作業生産物レビュー),箇条 6(作業生産物レビュー),箇条 7(作業生産物レビュープロセス),附属書 A(レビューの文書化)の規定から構成されている。

2. 作業内容

2.1 作業の進め方

(1) 作業環境は Zoom 会議とし、レビューツールを用いて月一回委員会を開催した。
(2) 幹事と専門家一名で委員会ごとに毎回準備会月二回行い、
   a) 英日訳語対応表、b) 日本語翻訳、c) 英語原本、指摘マーク付
を準備して委員会に臨んだ。
(3) 訳語選定の原則を以下の通り定めて審議した。
   a) 原則として日本語とする
a-1) JIS 用語を最優先とする、
a-2) JSTQB で日本語があれば採用する(Japan Software Testing Qualifications Board)
a-3) ISO/IEC12207 など、JIS 化された他の関連規格を参照し、合わせた方が良い場合
b) カタカナを使わざるを得ない場合
b-1) JIS 用語として定義されている場合
b-2) 日常カタカナでしか使われていない用語
b-3) 対応する日本語の概念がなく、日本語の対応が困難な場合

2.2 作業中問題となった点

a) 対応国際規格の issue に該当する訳語を何にするかについて多くの時間を費やした。委員会での用語を決める際の原則は,他の英語の類語ときちんと訳し分けができること,及び日本語から別の英語を類推しないようにすることである。対応国際規格では,failure,anomaly,defect,fault,problem,incident などと訳し分けられていること,また日本語としては,問題,課題,指摘,不正,欠陥などと混乱をしないような用語選択が必要であった。このため,審議の結果,結論としては二字熟語をあきらめ,“要検討事項”という用語に決定した。
b) 対応国際規格で metrics と表現されている単語,及び measure と表現されている単語について議論となった。品質特性に関する規格 ISO/IEC 25000 シリーズを開発している JTC1 SC7/WG6 では原則として metrics はメートル法を意味し,英米の一般用語として意味する尺度としては使わないことになっている。一方,品質特性を定義している JIS X 25000 シリーズでは,measure は測定又は測定量という用語を用いている。また、日本語の指標は index に対する訳語として用いられ、尺度は scaleに対する訳語として用いられている。このような状況において metrics 対する適切な用語を設定することは困難であるため極力対応国際規格を尊重しカタカナで"メトリクス"とすることとした。

3. その他

特になし。