プロセスアセスメント規格群JIS原案作成委員会

第3 種専門委員会

プロセスアセスメント規格群 JIS 原案作成委員会

委員長 新谷 勝利 (早稲田大学)

1. 経緯

1.1 委員会設立の目的

 令和 2 年度に、「JIS X 33020:0000 (ISO/IEC 33020:2019) 情報技術—プロセスアセスメントープロセス能力のアセスメントのためのプロセス測定フレームワーク」JIS 原案作成を目的とした「プロセスアセスメント規格群 JIS 原案作成委員会」(委員長:新谷勝利(早稲田大学)、幹事:小林正幸(三菱電機インフォメーションネットワーク))が設立された。
 プロセスアセスメント規格群は、ISO/IEC 33001 からISO/IEC 33099 で構成され、国際規格が制定される都度、日本国内の有用性を考慮して、JIS 原案を作成してきている。前版の ISO/IEC 15504 は技術文書を含め 10部から構成されていたが、本規格群は最大 99 部から構成されている。これは、ソフトウェア及びシステムの開発におけるプロセスのアセスメントとそれに基づく改善を分野に応じてより具体的に実践し易くするために、アセスメントプロセス、プロセスモデル、測定のフレームワークの 3 つの視点に対し、それらの夫々に要求事項を示す規格群、適用のための指針を説明する規格群及び要素となる規格群に整理したためである。詳細は、JIS X33001 の図1にて説明している。
 JIS X 33020:0000 (ISO/IEC 33020:2019)は、測定フレームワークの要素となる規格である。この規格の要求事項を示す規格は JIS X 33003 であり、実際のプロセスアセスメントの適用のための指針となる規格は ISO/IEC 33010 が予定されている。

1.2 JIS 原案の作成/改正に至る経緯

 この規格の以前の版として、ISO/IEC 33020:2015 を基に 2019 年に制定された JIS X33020:2019 があるが、JIS の制定手続きをしている間に、対応国際規格ではISO 9000 との整合性を図った能力レベルの定義に修正するための審議が進められ、2020 年に改訂された。このため、現行 JIS では、アセスメント結果(レベル評定含む)に差異が発生するなど、大きな影響を及ぼすため、早急に対応国際規格の修正部分に対応させるべく現行JIS を改正する必要が生じた。この改正により、国際規格と JIS との不整合がなくなることで、特にプロセスアセスメントがグローバルに実施されている自動車業界における混乱を排除することに寄与する。

1.3 規格内容

 JIS X 33020の概要は以下のとおりである。
 この規格は、タイトルが示すように、プロセス能力のアセスメントのためのプロセス測定フレームワーク、を定義するものである。「JIS X 33003 情報技術—プロセスアセスメントープロセス測定フレームワークに対する要求事項」に準拠し、プロセス属性の達成の程度を観ために、評価可能なプロセス属性を定義する。評価によりプロセス能力水準が決定される。
 主な改正点は、次のとおりである。
—プロセス能力水準及びプロセス属性について、ISO9000との整合性確保のため、成果の記載を修正する。
—プロセス能力水準を満足する要件を明確にするため、プロセス能力インディケータを附属書Bとして追加する。
—プロセス能力水準とプロセス属性の関係を明確にするため、測定フレームワークの手引を附属書Cとして追加する。

2. 作業内容

2.1 作業の進め方

 今回の JIS 原案作成にあたり、新しい試みを2つした。1つは、全ての会議が Zoom によるオンライン、そしてもう1つは、日本規格協会からオリジナルの ISO/IEC33020:2019 の仮訳を提供していただいたことである。全ての会議がオンラインということもあり、画面共有により、全員が同一画面を見ながら議論を進めた。この共有画面では、以下の項目がエクセルシート上で左から示され、左から順に比較しながら翻訳を議論し、確定していった。
—ISO/IEC 33020:2019
(1)オリジナル英文
(2)日本規格協会提供の仮訳
—ISO/IEC 33020:2015
(3)オリジナル英文
(4)現行 JIS
—(1)と(3)を比較し、同一なものは TRUE、そうで無いものは FALSE とし、翻訳チェックの作業量削減をはかった。
—ISO/IEC 33020:2019 の JIS 原案
—対訳用語辞書に関するコメント
 1998 年から維持してきている対訳用語辞書と日本規格協会提供の仮訳により、今回の活動を始めるに当たり、ISO/IEC 33020:2015 の JIS 原案作成より効率化ができると考えた。結論から言うと、ワークロード的に翻訳作業は楽になったが、仮訳で自動的に置き換えるにはほど遠いが、実利用を考慮した議論に従来より多くの時間を費やし、より読み易い規格文書にできたと評価している。JIS 原案作成は単純な翻訳というものではなく、原文に記述されている事項の実際の運用時を考慮しながら、議論を進めたことにより、日本文として現行 JIS と新 JIS では、より読み易いものにできたと考えている。

2.2 作業中問題となった点

 解説に、「2 今回の改正の趣旨」、「3 審議中に特に問題となった事項」、「4 主な改正点」、「5 その他の解説事項」に記録として残した。今回は ISO/IEC 33020 の2015 年版から 2019 年版の改正に伴うものであるので、改正の趣旨等、翻訳結果が分かり易くなることを目的としてかなりの実運用に伴う議論をした。これらの議論を通して、規格読者に認識していただきたいと思う事項を上記 4 つの章にまとめた。特に、「3 審議中に特に問題となった事項」において、以下を説明している。
a) プロセス能力水準およびプロセス属性
b) Suitability について
c) Assignable cause について
d) 対応国際規格の附属書 D における英語の誤り
e) プロセス属性(PA)番号の後ろの句点

3. その他

 一連の JIS 原案作成を計画する際には、単に英語を日本語に翻訳するというのではなく、そもそも原文の意味するものは何か、実際に現場で活用するに当たりどのような表現にすることがより原文の意図を伝えられるようになるかを JIS 原案に反映するべく委員の人選には留意した。結果として、SC7/WG10 小委員会委員の皆さんには、全員 JIS 原案作成委員会に参加していただくと共に、使用者委員を追加した。