プロセスアセスメント規格群JIS原案作成委員会
第3 種専門委員会
プロセスアセスメント規格群JIS原案作成委員会
<2021年度委員会活動報告>
委員長 堀田 勝美 (コンピータジャパン)
1. 経緯
1.1 委員会設立の目的
令和3年度に、「JIS X 33004:0000 (ISO/IEC 33004:2015)情報技術-プロセスアセスメント-プロセス参照モデル、プロセスアセスメントモデル及び成熟度モデルのための要求事項」JIS原案作成を目的としてプロセスアセスメント規格群JIS原案作成委員会(委員長:堀田勝美(コンピータジャパン))、幹事:小林正幸(三菱電機インフォメーションネットワーク))の活動を行った。プロセスアセスメント規格群は、ISO/IEC 33001からISO/IEC 33099で構成され、国際規格が制定される都度、日本国内の有用性、優先度を考慮して、JIS原案を作成してきている。当報告は、JIS X 33004:0000 (ISO/IEC 33004:2015)の完了を報告する。
1.2 JIS原案の作成に至る経緯
この規格の基となるISO/IEC 33004:2015は、ISO/IEC 33000シリーズの一環として制定された。ISO/IEC 33000シリーズは、ISO/IEC 15504シリーズの後継として、プロセスを評価するためのプロセス品質特性を、従来のプロセス能力から、セキュリティー、セーフティー、サステイナビリティーなどを含む、より広範なプロセス特性に拡張している。ISO/IEC 15504-1、 ISO/IEC 15504-2などの旧規格は順次廃止されており、これに対応してわが国でもJIS X 0145規格群を再構築し、順次、JIS X 33000規格群へ移行するよう廃止・制定を進めている。
ISO/IEC 33000シリーズに適合したアセスメントモデルは、既に欧州の自動車業界で品質向上に向けた取り組みとして用いられており、今後、セキュリティーやサステイナビリティー向上への対応、他の産業分野への普及などが想定され、益々重要性を増している
ISO/IEC 33000シリーズに適合したアセスメントモデルは、既に欧州の自動車業界で品質向上に向けた取り組みとして用いられており、今後、セキュリティーやサステイナビリティー向上への対応、他の産業分野への普及などが想定され、益々重要性を増している
1.3 規格内容
JIS X 33004:0000は、シリーズの中で基本的な要求事項の一部を定めるもので、タイトルが示すように、プロセスアセスメントで使用するプロセス参照モデル、プロセスアセスメントモデル及び成熟度モデルのための要求事項を定義する。
- プロセス参照モデル アセスメント対象となるプロセス一式について、「プロセスの名称」、「プロセスの目的」、「プロセスの達成すべき成果」を定義することを要求する。
- プロセスアセスメントモデル プロセス参照モデル及びJIS X 33003:2019に適合するプロセス測定フレームワークを基にして、アセスメントでプロジェクトの実施状況を評価するための「指標」を定義することを要求する。
- 成熟度モデル プロセスアセスメントモデルを用いて評価したプロジェクト個々のプロセス実施状況を総合して、組織全体のプロセス成熟度を導くための方法と制約事項を定める。
これらの要求事項は、JIS X 0145-2:2008のプロセス参照モデル及びプロセスアセスメントモデルに対する要求事項部分と、ISO/IEC TR 15504-7:2008の成熟度モデルに対する要求事項部分とを統合し、それらをJIS X 33000規格群の他の要求事項に整合するように見直している。
- プロセス参照モデル アセスメント対象となるプロセス一式について、「プロセスの名称」、「プロセスの目的」、「プロセスの達成すべき成果」を定義することを要求する。
- プロセスアセスメントモデル プロセス参照モデル及びJIS X 33003:2019に適合するプロセス測定フレームワークを基にして、アセスメントでプロジェクトの実施状況を評価するための「指標」を定義することを要求する。
- 成熟度モデル プロセスアセスメントモデルを用いて評価したプロジェクト個々のプロセス実施状況を総合して、組織全体のプロセス成熟度を導くための方法と制約事項を定める。
これらの要求事項は、JIS X 0145-2:2008のプロセス参照モデル及びプロセスアセスメントモデルに対する要求事項部分と、ISO/IEC TR 15504-7:2008の成熟度モデルに対する要求事項部分とを統合し、それらをJIS X 33000規格群の他の要求事項に整合するように見直している。
2.作業内容
2.1 作業の進め方
今回のJIS原案作成にあたっては、一昨年のJIS X 33020:2019の作業と同様、Zoomによるオンライン会議を中心に、日本規格協会から提供して頂いた仮訳をベースにして作業を実施した。委員の役割として、下案作成、一次レビュー、総合レビュー、解説編執筆、翻訳辞書の維持、構成管理の各作業を分担し、オンライン会議で逐次読み合わせつつ、翻訳の正確さ、一貫性、理解のしやすさなどに注意して議論を交わした。1998年から維持している翻訳辞書の使用とともに、二重、三重のレビューにより、質の高い規格にすることができたと考えている。また、計画的に作業を進めることができ、予定通りの進捗で効率的に作業を完了することができた。
2.2 作業中問題となった点
この規格は、ベースとなる初期の標準報告書(TR X 0021シリーズ) から既に20年以上が経過しており、規格の内容を理解するためには、技術的な経緯と背景に関する一定の理解が必要である。また、実際にアセスメントを実践する現場が規格の意図するところを理解できる必要がある。そもそも原文の意味するものは何か、実際に現場で活用するに当たりどのような表現にすることがより原文の意図を伝えられるかといったことが議論できるように、引き続いて、SC7/WG10小委員会委員の皆さん並びに使用者としての皆さんに本委員会に参加していただいた。
委員の議論を通して、規格読者に認識しておいていただきたいと思う事項を解説の4つの章、すなわち、「1制定の趣旨」、「2制定の経緯」、「3 審議中に特に問題となった事項」、「4 構成要素について」にまとめている。
特に、「3 審議中に特に問題となった事項」及び「4 構成要素について」において、委員会で議論になった次の事項を解説している。
a) プロセス品質特性の評価に用いることができる尺度として、順序尺度だけではなく、名義尺度や間隔尺度も可能であること
b) 適用範囲における“common sets of assessment indicators”の意味
c) アセスメント結果の表現において“translation”という言葉の意味
d) 成熟度モデルの適合の検証における“Technical Reports”の誤り
e) プロセスモデルの適合の検証における“community of interest”の意味
f) 「構造的に異なるプロセスアセスメントモデルを同一のプロセス参照モデル及びプロセス測定フレームワークに関連付けることを可能にする」の意義
委員の議論を通して、規格読者に認識しておいていただきたいと思う事項を解説の4つの章、すなわち、「1制定の趣旨」、「2制定の経緯」、「3 審議中に特に問題となった事項」、「4 構成要素について」にまとめている。
特に、「3 審議中に特に問題となった事項」及び「4 構成要素について」において、委員会で議論になった次の事項を解説している。
a) プロセス品質特性の評価に用いることができる尺度として、順序尺度だけではなく、名義尺度や間隔尺度も可能であること
b) 適用範囲における“common sets of assessment indicators”の意味
c) アセスメント結果の表現において“translation”という言葉の意味
d) 成熟度モデルの適合の検証における“Technical Reports”の誤り
e) プロセスモデルの適合の検証における“community of interest”の意味
f) 「構造的に異なるプロセスアセスメントモデルを同一のプロセス参照モデル及びプロセス測定フレームワークに関連付けることを可能にする」の意義
3. その他
「JIS X 33004:0000」の発行をもって、現時点で発行済みのISO/IEC 33000シリーズの要求事項パートに対応するすべてのJIS化を完了する。現在、対応する国際標準化ワーキンググループ(SC7/WG10)では、具体的な成熟度モデルの検討、及びアセスメント実施のためのガイダンス文書の作成を進めている。これらは、標準仕様書又は技術報告書として発行されるため、JIS化の対象にはならないが、現場で実際に使われるのは、これらの具体的な文書であることもあり、JISに準じた文書の策定が望まれる。