JIS X 23761 (EPUBアクセシビリティ-EPUB出版物の適合性及び発見可能性の要求事項)原案作成委員会

第3 種専門委員会

JIS X 23761 (EPUBアクセシビリティ-EPUB出版物の適合性及び発見可能性の要求事項)原案作成委員会

<2021年度委員会活動報告>

 委員長 村田 真(慶應義塾大学政策・メディア研究科)

1. 経緯

近年、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)の制定(2019年)及び「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の批准(2018年)を受けて、印
刷物だと判読できない人にも読めるような電子書籍(アクセシブルな電子書籍)を推進することが必要になってきている。そのために、電子書籍がアクセシブルかどうかを明示する方法が強く望まれている。

一方、電子書籍がアクセシブルかどうかを明示するための規格として、EPUB出版物のアクセシビリティを検証するためのコンテンツ適合性要求事項、及びEPUB出版物を検出可能にするためのアクセシビリティメタデータ要求事項を規定したISO/IEC 23761が制定されている。

ISO/IEC 23761の内容は、International Digital Publishing Forum(当時)で制定されていたEPUB Accessibility 1.0とほぼ一致する。この仕様をもとに日本から国際提案して規格化されたという経緯がある。

この国際規格を基に日本語固有の情報も追加して制定したのが今回のJISである。アクセシブルな電子書籍の市場の拡大が期待できる。

2. 作業内容
2.1 主な改正点

  •  1 適用範囲
  •  2 引用規格
  •  3 用語及び定義
  •  4 達成方法
  •  5 古いバージョンへの適用
  •  6 発見可能性
  •  7 アクセシブルな出版物
  •  8 最適化された出版物
  •  9 配信

2.2 作業中問題となった点

日本語固有の事情を附属書JAとして追加することとなり、その内容が問題となった。審議の結果、日本語固有の情報を表すための機構には踏み込まず、W3Cでの仕様制定に任せることにした。国際的なツールに組み込むためには、JISではなくW3C仕様とすることが必要だからである。

3. その他

欧州では、欧州アクセシビリティ指令をきっかけに、ISO/IEC 23761(及びその改訂版としてW3Cで制定中のEPUB Accessibility 1.1)の普及が急速に進みつつある。日本での普及、日本語の事情を考慮したW3C仕様化が今後の課題となる。