JIS X 22123-1改正原案作成委員会

  • シェアする
  • ポスト
  • noteで書く
  • LINEで送る

第3 種専門委員会

JIS X 22123-1改正原案作成委員会

<2023年度委員会活動報告>

委員長 鈴木 俊宏(日本オラクル株式会社)

1. 経緯

・ 委員会設立の目的

クラウドコンピューティング分野で使用される語彙の用語及び定義を規定するISO/IEC 22123-1:2021(Information technology-Cloud computing-Part 1: Vocabulary)(以下,対応国際規格という。)はJIS X 22123-1:2022 として制定されている。今般、対応国際規格が改訂されたことに伴い委員会を設立し、改訂された対応国際規格(ISO/IEC 22123-1:2023)の改正JIS 案を作成した。

・ JIS 原案の作成/改正に至る経緯及び規格内容

今回,認定産業標準作成機関である一般財団法人日本規格協会は,情報分野産業標準作成委員会の下に,JIS 素案作成委員会(一般社団法人情報処理学会 情報規格調査会 JIS X 22123-1 改正原案作成委員会)を設置し,所定の手続きを経てJIS 案を作成した。

なお,この素案作成委員会は,クラウドコンピューティング技術及び市場動向の知見をもつ有識者としてこの規格の対応国際規格の開発にも従事した委員を中心に組織した。

この規格の対応国際規格は次の構成からなる国際規格群の一つである。

  •  ISO/IEC 22123-1:2023, Information technology — Cloud computing — Part 1: Vocabulary
  •  ISO/IEC 22123-2:2023, Information technology — Cloud computing — Part 2: Concepts
  •  ISO/IEC 22123-3:2023, Information technology — Cloud computing — Part 3: Reference Architecture

さらには、新しいクラウドサービスモデルを規定した以下の国際規格の用語も含まれる。

  •  ISO/IEC 5140:2024, Information technology — Cloud computing — Concepts for multi-cloud and the use of multiple cloud services

今後,国内外における情報通信技術の共通用語としてこの規格が大いに必要とされることが期待される。さらに,クラウドコンピューティングがけん(牽)引する日本経済の成長戦略の一助として,この規格を参照することによって,今後の国際規格,業界標準,企業活動,さらには政府調達はもとより,クラウドコンピューティングを前提とした経済社会システム全般への影響など,混乱のない協調性をもった情報化社会の実現が期待される。

2. 作業内容
2.1 作業の進め方

既存規格(JIS X 22123:2022,JIS X 9501-1:2019 など)との比較おこないながら下訳を作成したうえで,順次全員によるレビューを実施した。特に、既存用語定義との整合性を重視した。作業中の審議事項については,委員長及が解説にまとめた。

2.2 作業中問題となった点

今回の改正審議中に新たに問題となった点は特にないが、制定時に問題になった事項(以下、再掲)を引き続き問題と認識して審議を行った。


a) 翻訳で使用した片仮名用語について,この規格はクラウドコンピューティングの用語を定義しているが,クラウドコンピューティングは市場先行型であると同時に業界主導のパラダイムであり,一般に使われている用語の呼称が片仮名読みで流通している。また,対応国際規格の一致(Identical)規格であることから,例えば,“Cloud service customer”を“クラウドサービス利用者”とせずに,“クラウドサービスカスタマ”と片仮名で直訳するなど,固有名詞については市場で採用されている呼び名とし,極力,そのまま片仮名表記とすることとした。


b) 今後出版されるであろうクラウドコンピューティング関連規格やクラウドコンピューティングを前提とした他の規格から参照されることを想定し,重要と思われる用語は原語を付記する[例えば,クラウドサービスカスタマ(cloud service customer)]など,誤解が避けられるような表記とした。

3. その他

上述したが,クラウドコンピューティングの領域はいまだに技術的に進化を遂げている。また各国の法規制の影響を受け運用も複雑さを増している。このような状況のなか,今回制定した対応規格も既に改定作業を視野に検討が始まっている。ついては,国際規格の改訂版が出版され次第,再度委員会を結成し当該対応規格の改正を実施する必要がある。
  • シェアする
  • ポスト
  • noteで書く
  • LINEで送る