ITES-BPOライフサイクルプロセス規格群(第3部/第4部)JIS 原案作成委員会

第3 種専門委員会

ITES-BPOライフサイクルプロセス規格群(第3部/第4部)JIS 原案作成委員会

<2021年度委員会活動報告>

 委員長 清水裕子(ISO/IEC JTC1/SC40/WG3 国内委員会 主査)

1. 経緯
1.1 委員会設立の目的と経緯

 ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)は、労働生産性の向上に有効であるとしながらも、日本におけるBPO利用は欧米に比べて不十分である。その要因の一つとして、BPO事業者やその信頼性に関する情報が不足している点が挙げられる。一方、2016年11月に、ITを使用したBPO(ITES-BPO)ライフサイクルプロセスに関する国際規格(ISO/IEC 30105シリーズ)が発行された。BPO分野における用語やプロセスの標準化が行われていない我が国にとって当該規格の導入は重要であるが、事業者の規模は多様で国際規格のままの利用ではハードルが高いこと、また、事業者と顧客企業との間、又は協業相手との間で標準の理解に齟齬が生じることのないよう、JIS化が必要であった。

 2019年度の30105-1プロセスリファレンスモデル(PRM)、2020年度の30105-2プロセスアセスメントモデルに続き、30105-3測定フレームワーク及び組織成熟度モデル、30105-4用語と概念をJIS化すべく委員会を設立、活動を行った。これにより30105シリーズの主たる内容全体がJIS化されることとなる。

1.2 規格内容

【30105-3 測定フレームワーク及び組織成熟度モデル】
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語及び定義
4 測定フレームワーク(MF)及び組織成熟度モデル(OMM)の概要
5 プロセス能力用ITES-BPO測定フレームワーク(MF)
6 プロセス属性の評定及び集約
6.1 プロセス属性評定の尺度
6.2 プロセス属性評定方法
7 プロセス能力レベルモデル-プロセス能力レベルの達成
8 組織成熟度モデル(OMM)
8.1 概要
8.2 ITES-BPO組織成熟度モデルの構造(OMM)
9 組織成熟度の定義
9.1 レベル0の組織-未成熟
9.2 レベル1の組織-基本
9.3 レベル2の組織-管理された活動
9.4 レベル 3の組織-管理された組織
9.5 レベル4の組織-戦略的アライメント
9.6 レベル5の組織-トランスフォーメーショナル
10 プロセス属性評定から成熟度を導出するためのルール
10.1 概要
10.2 成熟度 レベル1
10.3 成熟度 レベル2
10.4 成熟度 レベル3
10.5 成熟度 レベル4
10.6 成熟度 レベル5
11 プロセス領域の包含条件
附属書A(参考)測定フレームワークの適合
附属書B(参考)成熟度モデルの適合

【30105-4 用語と概念】
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語及び定義
4 概念
4.1 一般
4.2 ITES-BPOライフサイクルプロセスカテゴリ
4.3 アセスメントのフレームワーク
5 規格間の相互関係
6 頭字語の用語集
 

2. 作業内容
2.1作業の進め方

 第1部、第2部と同様に、第3部、第4部共に、委員会設立後、一部の委員で分科会を組成し当該委員が分担して原案を作成、Zoom会議でレビューを行うことを繰り返した。分科会でのレビューを行った原案を原案作成委員会全委員に送付しレビューを依頼した。集まった意見を元に、委員会にて各部ごとに最終レビューを行った。
 分科会は計22回に及び、本原案を仕上げることができたのは、分科会委員の方々の多大なるご協力のおかげである。シリーズ全体のJIS原案開発全体において、特に、SC40委員会委員、NTTデータの松川氏、HROne社の武谷氏の尽力に帰するところ大であった。

2.2 作業中問題となった点

【30105-3、30105-4 共通】

① 参照規格の版数について
 ISO/IEC 33000シリーズ(又は対応するJIS),ISO/IEC 20000 シリーズ(又は対応するJIS)などの一部を参照しているが,当該国際規格及びJISが既に改版されているものもあり議論となった。審議の結果,基本的には本原案が対象としているISO/IEC 30105シリーズに記載の版を記載することとした。

② ISO規格側のエディトリアルエラーの確認と対処について
ISO/IEC 30105-3、ISO/IEC 30105-4のエディトリアルなミスについて、翻訳の過程において確認され、SC40/WG3にフィードバックするものとした。

【30105-3】
➀ レベル5の組織-トランスフォーメーショナルの解釈について(9.6)
Part 1及びPart 2でのプロセスに示されているイノベーション(SEN2)は,BPOベンダ側プロセスのイノベーション活動として理解していたが,当規格の9.6では,顧客のビジネスを革新するという内容となっている。この内容理解で正しいか,という指摘があった。これに対して,委員会で議論がなされ,審議の結果,レベル4の状態で顧客のビジネスに整合し始めたBPOベンダが,レベル5で顧客のビジネスを革新する状態に発展するという解釈であり,SEN2のイノベーションとは異なるとするのが適切であるとした。

3. その他

JIS Y 30105 第1部~第4部までのJIS化を進めたことにより、当該シリーズの主たる内容がJISとして揃うこととなる。今後、委員諸氏のお力を借りながら、規格の活用を推進していく必要がある。
また、ISO/IEC 30105シリーズでは、Part1~Part5の改訂を進めているほか、
30105-6: Guidelines on risk management
30105-8: Continual performance improvement of ITES-BPO
30105-9: ITES-BPO DX
等の新Partの開発を進めており、今後、国内での利用を踏まえ、JIS化を検討する必要がある。