SC 41 専門委員会 (インターネット・オブ・シングスおよびデジタルツイン)

第1 種専門委員会

SC 41 専門委員会(インターネット・オブ・シングスおよびデジタルツイン/Internet of Things and Digital Twin)

<2021年度委員会活動報告>

委員長 小川 健一((株)日立製作所)

1. スコープ

 SC 41 は 2016 年 11 月にノルウェーのリレハンメルで開催された JTC 1 総会において,センサーネットワークに関連した規格開発を担当していた JTC 1直下の WG 7 とインターネット・オブ・シングスに関連した規格開発を担当していた同じく JTC 1 直下の WG 10 を包含して設置された.その後 2020 年11 月の JTC 1 総会で JTC 1 からデジタルツインに関する 2 件のプロジェクトが SC 41 にアサインされたことを受けて,タイトルとスコープを変更した.これらの経緯から,SC 41 はインターネット・オブ・シングスやセンサーネットワーク及びデジタルツインを含んだこれらの関連技術に関する標準化をその活動の対象としている.

2. 参加国

SC 41 は 2022 年 5 月 29 日時点で,
  • P メンバ:30 ヵ国(オーストラリア,オーストリア,ベラルーシ,ベルギー,カナダ,中国,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,インド,アイルランド,イスラエル,イタリア,日本,韓国,ルクセンブルグ,マレーシア,メキシコ,オランダ,ノルウェー,ロシア,サウジアラビア,シンガポール,スペイン,スウェーデン,スイス,アラブ首長国連邦,英国,米国)
  • O メンバ:11 ヵ国(アルゼンチン,アイスランド,インドネシア,イラン,ケニア,パキスタン,フィリピン,ポーランド,ポルトガル,ルーマニア,スロバキア)
で構成されている.

 SC 41 の幹事国は韓国が担当し,議長はカナダのDr. François Coallier,セクレタリは韓国の Ms.Jooran Lee である.
 以下の日本提案の規格開発ではエディタを引き受けている.
  • ISO/IEC 30147:2021 : Integration of IoT trustworthiness activities in ISO/IEC/IEEE 15288 system engineering processes(山田氏:産総研)
  • ISO/IEC 30161-1:2020 : Data exchange platform for IoT services - Part 1: General requirements and architecture(横谷氏:金沢工大)
  • ISO/IEC 30161-2 : Data exchange platform for IoT services – Part 2: Transport interoperability between nodal points(石橋氏:金沢工大)
  • ISO/IEC 21823-4:2022 : Interoperability for Internet of Things Systems – Part 4: Syntactic interoperability(山下氏:東芝)

3. トピックス

a) 規格開発体制

 SC 41 としての WG の体制は,第 1 回のソウル総会で 3 つの WG が設置され,2020年に4つ目のWGは設置された後,6月の第 9 回総会で 5 つ目の WG である,WG 7 Maritime, underwater IoT and Digital Twin applications が設置された.本WG設置にあたりISO/TC 8,IEC/TC 18とのJWGの設立を検討しJWG設立後WG 7を解散する条件が付与された.

 SC 41 には他の TC/SC に関連するプロジェクトが提案されることから,連携しながら開発を行っている.本年は,SC 42 liaison officerのサポートを目的とした,AG28 JTC 1/SC 42 Liaison Groupと,AG 29 LCG on Communication and Networkingを設置した. 
 
 また, Cyber physical systemと30141(IoT RA),30173(Digital twinコンセプトと用語),PWI-JTC1-SC41-5(Digital twin RA)の関係整理や関連リエゾンとの活動を目的としたAhG 30 Cyber Physical systemsが設置された.
 
 昨年度Digital twin関連で他組織との連携を図ることを目的として設置されたAG 27は12月の第10回総会で廃止された.また,IoT の相互運用性における Trustworthinessの影響を 検討する AHG 26 Trustworthiness interoperabilityは報告書でPWI Behavioral and policy interoperabilityを提案し解散した.

b) 規格開発

 2021 年度は以下の規格が発行された.
  • ISO/IEC 30147:ISO/IEC/IEEE 15288システムエンジニアリングプロセスへのIoTトラストワージネスのアクティビティの統合
  • ISO/IEC 30165:リアルタイムIoT のフレームワーク
  • ISO/IEC 21823-3:IoTシステムの相互運用性 - 第3部:セマンティック相互運用性
  • ISO/IEC 21823-4:IoT 相互運用性-分冊4:シンタクティク相互運用性
  • ISO/IEC TR 30174:人間の社会的な相互力関係に似た社会化されたIoTシステム
  • ISO/IEC TR 30176:IoTとDLT/ブロックチェーンの統合:ユースケース
  • ISO/IEC 30162:産業IoT における互換性の要求事項とデバイスモデル
  • ISO/IEC TR 30167:IoT用の水中通信技術
  • ISO/IEC 30171-1:水中音響ネットワーク(B-UWAN)ベースステーションの概要と要求事項

c) Workshop

 9月16, 21, 23, 28日にWorkshop on Digital Twin Reference Architectureが行われた.日本からは佐久間氏:東芝が28日のWorkshop 4 Digital twin systems integration co-chairとして参画し講演を行った.
また,12月の第10回総会にて,SC 41成立5周年を記念した公開Webinarを2022年4月に行うことが決議された.

4. 日本対応/方針

a) 日本提案規格

1) ISO/IEC 30147

 ISO/IEC/IEEE 15288に対してIoTにおけるトラストワージネスを実現するために追加すべき事項をまとめた文書である30147は4月23日締め切りでFDIS投票が実施され成立,5月28日に発行した.

2)ISO/IEC 30161-2

 IoT DEPの構成要素におけるデータ転送の為の機能要求条件規定である30161-2は日本から NP提案し,4 月 9 日締め切りで NP 投票が実施され成立,11月26日にCDコメント募集を完了し,コメント解決を完了.2022年6月17日締め切りでCDV投票を開始した.

3) ISO/IEC 21823-4

 シンタクティク視点でのIoT相互運用性を定めた文書である21823-4は7月16日締切でCDV投票が実施され成立,1月28日締め切りでFDIS投票が実施され成立,3月9日に発行した.本規格に関連したユースケースとして,実装例をGitHub(https://github.com/21823-4/usecases)に公開した.

b) 日本参加規格

1) ISO/IEC TS 30168

 鈴木氏:東芝がコ・エディタとして参画しているドイツ提案の Industrial IoT 向けの一般的トラストアンカーAPIであるTS 30168は8月27日締め切りで1st CDコメント募集,4月22日締め切りで2nd CDを回覧中.

5. その他

a) 各国動向

 SC 41では,NP 提案前に提案内容の説明を行うのが標準的なプロセスとなっており,継続して中国,韓国の説明が多く行われている.第10回総会では,中国からの新規提案のうち2件についてNP提案を認める決議が不採択となり議事に残った.従来は当初提案が合意に至らない場合は提案内容修正やTR提案への変更または提案を取り下げ継続議論とする等により決議不採択が残らない形をとるのが通例であったため,今回決議不採択の記載が残ったのは異例であった.今回は無理に決議を求めたことで不採択となったと考えられ,今後無理に決議を求めることが減ることが想定される.

b) SC41専門委員会

 2021年度の国内議論として,SC 41専門委員会では定期的な専門委員会会合を年11回,日本提案プロジェクトに対応した非定期アドホック会合を9回行った. 2021年度もCOVID-19影響により全てWeb会議での議論とし,対面会議は行わなかった.
 また,国際会議への日本からの出席者は第9回総会,第10回総会共に12名であった.