SC 40 専門委員会 (ITサービスマネジメントとITガバナンス)

第1 種専門委員会

SC 40 専門委員会(IT サービスマネジメントと IT ガバナンス/IT Service Management and IT Governance)

<2024年度委員会活動報告>

委員長 岡崎 靖子(敬愛大学)

1. スコープ

 このSC は,組織の中で経営の観点からITをどう有効にかつ効率よく活用していくかを扱う「IT ガバナンス」と組織内でどうITを効率的に運用するかを示す「IT サービスマネジメント」を担当する.2013年11月のJTC 1総会で設立が承認され,2014年2月に活動を開始した.2022年11月にスコープが見直され,現在のスコープは下記である.
『以下の標準化
  •   ITガバナンス
  •   データガバナンス
  •   ITサービスマネジメント
  •   ITを使用したサービス - ビジネスプロセスアウトソーシング 
SC40は,これらの分野における中心的な役割を担い,相互の関心テーマについて,関連する委員会(サイバーセキュリティ,プライバシーなど),外部団体, 及びその他のステークホルダーとコミュニケーションし,協力し,及び協働する.』

2. 参加国

 幹事国はオーストラリア.コミッティ・マネージャは2024年4月よりKylie Schumacher氏(オーストラリア),議長は2023年1月よりPatricia Kenyon氏(オーストラリア)である.
 参加国はP-メンバ36か国(主な参加国は,アルゼンチン,オーストラリア,ブラジル,カナダ,中国,フィンランド,フランス,インド,イラン,アイルランド,イスラエル,韓国,オランダ,ニュージランド,ペルー,フィリピン,ポルトガル,南アフリカ,ルワンダ,スペイン,スウェーデン,英国,日本),O-メンバ27か国である(2025年5月現在).
WG 1のコンビーナは,2023年5月31日からSteve Tremblay氏(カナダ)が担当していたが,自己都合により2024年4月26日に離任し,各国投票を経て2024年6月21日からSanjiv Agarwala氏(インド)が担当している.WG 2 のコンビーナは2018年1月よりSuzanne Van Hove氏(米国からの推薦)が担当している(3期目).WG 3のコンビーナは2024年1月からChris Wang氏(中国)担当している.なお,Suzanne Van Hove氏とChris Wang氏は,多忙のためにコンビーナの離任希望を表明しており,2025年3月14日から各国によるWG2とWG3のコンビーナ候補の推薦(CIB: Committee Internal Ballot)が始まった.
 総会は2024年6月にカンピーナス(ブラジル)にて対面withリモート形式で開催された.カンピーナスは,国際便の発着が多いサンパウロから離れていることもあり,現地参加者は18名に留まったが,リモートも含めると23か国79名の参加者があり,総参加者数は,ほぼ例年並みだった.日本からは,現地参加1名,リモート参加9名の合計10名が参加した.日本時間では参加しにくい時間帯だったにも関わらず(日本と現地との時差は12時間),日本からのリモート参加者は積極的に審議に参加した.
 WGの中間会合は2024年11月にデルフト(オランダ)にて対面withリモート形式で開催された.日本からは,9名がリモート参加した.日本からの現地参加者はいなかった.

3.トピックス

2024年度は,ISが4件,TSが2件,TRが1件発行された.
  •  ISO/IEC TS 20000-15: Information technology — Service management—Part 15: Guidance on the application of Agile and DevOps principles in a service management system
  •  ISO/IEC TS 20000-16:Information Technology – Service Management – Part 16: Guidance on sustainability within a service management system based on ISO/IEC 20000-1
  •  ISO/IEC TR 20000-17:Information Technology – Service Management – Part 17: Scenarios for the practical application of ISO/IEC 20000-1
  •  ISO/IEC 30105-1:Information technology — IT Enabled Services-Business Process Outsourcing (ITES-BPO) lifecycle processes — Part 1: Process reference model (PRM)
  •  ISO/IEC 30105-2:Information technology — IT Enabled Services-Business Process Outsourcing (ITES-BPO) lifecycle processes — Part 2: Process assessment model (PAM)
  •  ISO/IEC 30105-3:Information technology — IT Enabled Services-Business Process Outsourcing (ITES-BPO) lifecycle processes — Part 3: Measurement framework (MF) and organization maturity model (OMM)
  •  ISO/IEC 30105-5:Information technology — IT Enabled Services-Business Process Outsourcing (ITES-BPO) lifecycle processes — Part 5: Guidelines
国内委員数の減少により,WG3小委員会は2024年3月で閉鎖し,WG3で担当している規格(ISO/IEC 30105シリーズ)の審議は,2024年4月よりSC40専門委員会が担当している.
また,2026年度の総会を東京で開催することが決まり,準備を開始した.

4. 日本対応/方針

4-1. WG 1(IT ガバナンス:Governance of IT)

(1) WG1小委員会
主査は原田要之助氏(情報セキュリティ大学院大学・名誉教授)が担当している.

(2) ISO/IEC 38501(ITガバナンス- 実装の手引)の改訂
当規格は,組織の経営陣が,ISO/IEC 38500 (組織のITガバナンス)の原則とモデルを組織に当てはめて実装するための手引である.ISO/IEC 38500は2024年2月に改訂されており,その改訂内容に合わせて当規格の改訂版を開発中である.2024年度は,WD作成とCD作成が行われた.当規格はシステム管理基準で参照されていることと将来のJIS候補となることが見込まれており,日本はWD作成に積極的に関与・貢献した.CDレビューにおいても丁寧にレビューし,日本からTEコメント(技術的指摘)を中心に86件のコメントを出した.CDのCRM(コメント処理会議)は,2025年度に実施される予定である.

(3) ISO/IEC 38505-1(データガバナンス- ISO/IEC38500のデータガバナンスへの適用)の改訂
当規格は,組織の経営層がISO/IEC38500の原則とモデルをデータガバナンスに適用して経営を実施するガイドラインである.当規格も,ISO/IEC 38500改訂版の改訂内容に合わせて改訂版を開発中である.2024年度はWD作成とCD作成が行われた.日本は,WD作成は静観していたが,CDレビューでは一通り目を通してコメントを出した.

(4) ISO/IEC TR 38509 (ITガバナンス-ソーシャル・インクルージョンのための責任あるガバナンス)の開発
当規格は,IT利活用の優先付けをする意思決定プロセスにおいて,ソーシャルインクルージョンを考慮する上で参考となる文献・事例を紹介している.当規格は,当初2023年6月の総会で韓国からNPとして提案されたが,内容が不十分ということで,まずはWhite Paperを作成いただくこととなった.2024年6月の総会で再び韓国からWhite Paperを作成したのでそれをベースにTRを開発したいとの提案があり,TR開発が始まった.2024年度は,WD作成とWDのエキスパートレビューが行われた.日本は,WD作成は静観していたが,WDのエキスパートレビューでは,エディタが規格開発の経験がないため,規格のお作法に関する助言的なコメントを出した.また,WDのCRMにおいて,TRのタイトルの「Social inclusion」を「Digital Inclusion」に変えた方がよいとの提案が出たため,2025年3月12日から,タイトル変更とそれに伴うスコープ変更に対するCIBが始まった.日本は,「Digital Inclusion」とは何かがわかりにくいため,代替のタイトル案を付けて反対投票した.投票結果は4月に出る.

(5) ITガバナンスに関するサーベイの実施
日本からの提案で, ISO/IEC 38500の各国の利用状況を調査するためのWG1サーベイタスクグループが発足し(リーダ:岡崎靖子),2024年3月にWG1メンバを対象としたサーベイ(アンケート)が実施された.2024年度は,6月の総会で岡崎からその結果を報告した.これを受け,今度はアンケート対象をWG1の外の方々にも広げ,さらにITガバナンスの取り組み状況に関する質問も含めてサーベイ2を実施することとなり,準備を経て,2025年1月から3月末まで各国でサーベイ2が展開された.日本は,ITガバナンスを推進している国内の団体などに協力をお願いして当アンケートを宣伝し,日本から多くの方々に参加いただいた.サーベイ2の結果のサマリーは,SC40のホームページで掲載予定である.

(6) SDGs対応の検討
2023年11月の中間会合においてカナダからSDGsの重要性が述べられ,ISO/IEC 38501の改訂版にSDG対応を取り込む検討タスクグループが発足し,日本もタスクグループに参加しているが,2024年度はタスクグループとしての目立った活動はなかった.

(7) その他
ISO/IEC TS 38505-3(データガバナンス-データ分類の手引)のSR(Systematic Review)があった.国内では,データの分類に関しては分野ごと(セキュリティ,AIなど)にその分野で取り決めた規格が使われている.そのため,当規格の国内利用はあまりないと考えられるが,他国との関係を考慮してWithdrawではなく,Abstain投票をした.
また,ISO/IEC 38500:2024の国内での利用が見込まれるため,JIS原案を作成した (JIS原案作成委員会委員長:原田要之助氏,原案作成委員会幹事:平野芳行氏).

4-2. WG2(ITサービスマネジメント:Service management – Information technology)

(1) WG2小委員会
主査は2023年6月から青木保壽氏が担当している.

(2) ISO/IEC TS 20000-16 (サービスマネジメント –第16部:ISO/IEC 20000-1をベースにしたサービスマネジメントシステムにおける持続性に関する手引き)の開発
当規格は,カナダ提案の規格で,ISO/IEC20000-1(サービスマネジメント-第1部:サービスマネジメントシステム要求事項)の要求事項に基づいて,持続可能性を念頭に置いたサービス提供を実現するためのガイダンスを提供している.2024年度はDTS投票が行われた.それまでの審議で品質向上が図られていたため,ED(エディトリアル)コメントを付けて賛成投票した.当規格はこの後,2025年2月に発行された.

(3) ISO/IEC TR 20000-17(サービスマネジメント-第17部: ISO/IEC 20000-1をベースにしたサービスマネジメントシステムの実践適用のためのシナリオ)の開発
当規格は,ISO/IEC 20000-1をベースとしたサービスマネジメントシステムの実践適用のためのシナリオ,解説,事例を提供している.ISO/IEC 20000-1の改訂に関して国際会議で検討した際に同パートに不足しているということから発生した内容で,将来的にISO/IEC 20000-2(サービスマネジメントシステムの適用の手引)などの他パートに含められていく可能性がある.2024年度は,DTR投票が行われた.DTRでは,既に発行されているISO/IEC 20000-14 (サービスの統合と管理のISO/IEC 20000-1への適用の手引き)の記述との矛盾があったため,コメント付き反対投票をした.エディタやキーパーソンらも日本が指摘した問題点を認識したが,すぐには良い修正案がみつからず,改訂版の開発の際に対応することとなった.当規格はこの後,2024年10月に発行された.

(4) ISO/IEC TS 20000-18(サービスマネジメント-第18部: サービスマネジメントシステムにおけるエクスペリエンスマネジメントの活用に関する手引)の開発
当規格は,オランダ提案の規格で,ISO/IEC 20000-1に基づくサービスマネジメントシステム(SMS)を活用したサービスのエクスペリエンスをマネジメントするのに必要なガイダンスを提供している.オランダ規格NEM80382を基にしており,2024年度はNP投票が行われた.回覧された資料の中で,当規格の重要用語「XLA (Experience Level Agreement)」に商標登録マークがついていたが,オーナーから使用許可を得ているか不明のため,日本はそれを理由に条件付き反対投票した.NPの投票結果は,賛成国多数で,当プロジェクトの開発は開始することとなった.

(5) その他
4件のSRがあり,日本はすべてConfirm(継続利用)投票した.

  •  ISO/IEC 20000-2(サービスマネジメントシステムの適用の手引)
  •  ISO/IEC 20000-3(ISO/IEC 20000-1の適用範囲の定義と適用可能性についての手引)
  •  ISO/IEC 20000-10(概念及び用語)
  •  ISO/IEC TS 20000-11 (ISO/IEC 20000-1とITIL®の関係についての手引)

ISO/IEC 20000-2は,ISO/IEC 20000-1の適用の手引であるため,ISO/IEC 20000-1の次の改訂に合わせて改訂することが望ましいと判断した.ISO/IEC 20000-3とISO/IEC TS 20000-11は,変更すべき点があまりないため,改訂は不要と判断した.ISO/IEC 20000-10は,発行後にDirectivesが変わっており,最新のDirectivesに沿うような改訂にするためには十分な事前検討が必要で,まだ改訂版の開発を開始できる状況ではないと判断した.なお,SRの投票結果は4件とも日本の意図通りConfirmとなった.

4-3. WG3(IT を使用したビジネスプロセスアウトソーシング:IT Enabled Services-Business Process Outsourcing(ITES-BPO))

(1) 審議体制
「3.トピックス」で前述したように,国内ではSC40専門委員会が担当している.

(2) ISO/IEC 30105-1(プロセス参照モデル)の改訂,30105-2(プロセスアセスメントモデル)の改訂,30105-3 (測定フレームワーク及び組織成熟度モデル)の改訂,30105-5(ガイドライン)の改訂
2016年に発行したパート1~5の初版の不具合修正とその後改訂された関係規格の内容を反映するため,2019年よりこれら5パートの改訂版の開発が始められており,2024年度は,4月にパート1,2,3,5のFDIS投票が行われた.DIS投票での日本からのコメント箇所は対応されていたため,FDIS投票ではコメントなしで賛成投票した.この後2024年6月に,これらパート1,2,3,5の改訂版は発行された.なお,パート4 (主要な概念)の改訂版は,一足早く2022年11月に発行済みである.ISO/IEC 30105シリーズのコア規格はパート1~4の4部で,これでコア規格の改訂版は全て揃った.

(3) ISO/IEC TR 30105-7(成熟度アセスメントの例)の改訂
当規格は,BPOサービスを提供するITベンダーのプロセス能力度レベルと組織成熟度レベルを判定する方法を,例を使って解説している.前述のコアパートの改訂版の改訂内容に合わせて当規格の改訂版を開発することとなり,2024年度はWD作成とWDのエキスパートレビューが行われた.日本は,改訂点をForwardなどに漏れなく明記しておくことが重要と考え,WDのエキスパートレビューでは,この点に関するコメントを中心に,初版から内在していた説明不足の指摘も合わせてコメントを出した.

(4) その他
2023年の総会で提案された新規格がいくつかあるが,担当者がNP準備中である.日本は今のところ静観している.
また,JIS Y 30105-1:2021(プロセス参照モデル)の定期見直しがあり,Confirm(継続利用)とした.基となるISO/IEC 30105-1は2024年6月に改訂されたが,技術的な変更はあまりなく,また,当JISの国内利用も限定的であるため,ただちに当JISを改正する必要性は低いと考え,コアの4パート全てのJISの見直し時期に4パート同時に判断する方針とした.
 

5. その他

SC40の担当規格一覧やSC40の紹介は下記に掲載されている.

https://www.iso.org/committee/5013818.html

https://committee.iso.org/home/jtc1sc40

また,上記に加えてSC40とSC42のJWG1で開発されたISO/IEC 38507:2022(AIの利活用が組織のガバナンスに与える影響)がSC42の傘下にあり,対応JISの発行待ちの状況である.