SC 40 専門委員会 (ITサービスマネジメントとITガバナンス)
第1 種専門委員会
SC 40 専門委員会(IT サービスマネジメントと IT ガバナンス/IT Service Management and IT Governance)
<2023年度委員会活動報告>
委員長 岡崎 靖子(早稲田大学・グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所)
1. スコープ
このSC は,組織の中で経営の観点からITをどう有効にかつ効率よく活用していくかを扱う「IT ガバナンス」と組織内でどうITを効率的に運用するかを示す「IT サービスマネジメント」を担当する.2013年11月のJTC 1総会で設立が承認され,2014年2月に活動を開始した.2022年11月にスコープが変更され,現在のスコープは下記である(データガバナンスが明示された).
『以下の標準化
『以下の標準化
- ITガバナンス
- データガバナンス
- ITサービスマネジメント
- ITを使用したサービス - ビジネスプロセスアウトソーシング
2. 参加国
幹事国はオーストラリア.コミッティ・マネージャはSuba Ananth氏(オーストラリア),議長は2023年1月よりPatricia Kenyon氏(オーストラリア)である.
参加国はP-メンバ36か国(主な参加国は,オーストラリア,カナダ,中国,フィンランド,フランス,インド,イラン,アイルランド,韓国,オランダ,ペルー,フィリピン,ポルトガル,南アフリカ,スウェーデン,英国,米国,日本),O-メンバ26か国である(2024年7月現在).
WG 1のコンビーナは,2023年3月13日にRay Walshe氏(アイルランド)が離任し,コンビーナ不在状態になったが2023年5月31日にSteve Tremblay(カナダ)が就任した.WG 2 のコンビーナは2018年1月よりSuzanne Van Hove氏(米国)が担当している(3期目).WG 3のコンビーナは2018年1月より2023年12月まで榎本義彦氏が,2024年1月からはChris Wang氏(中国)担当している.
総会は2023年6月にロンドンで開催された(対面withリモート形式).対面での総会は2019年以来4年ぶりだった.WGの中間会合は2023年11月に金浦(韓国)で開催された(対面withリモート形式).
参加国はP-メンバ36か国(主な参加国は,オーストラリア,カナダ,中国,フィンランド,フランス,インド,イラン,アイルランド,韓国,オランダ,ペルー,フィリピン,ポルトガル,南アフリカ,スウェーデン,英国,米国,日本),O-メンバ26か国である(2024年7月現在).
WG 1のコンビーナは,2023年3月13日にRay Walshe氏(アイルランド)が離任し,コンビーナ不在状態になったが2023年5月31日にSteve Tremblay(カナダ)が就任した.WG 2 のコンビーナは2018年1月よりSuzanne Van Hove氏(米国)が担当している(3期目).WG 3のコンビーナは2018年1月より2023年12月まで榎本義彦氏が,2024年1月からはChris Wang氏(中国)担当している.
総会は2023年6月にロンドンで開催された(対面withリモート形式).対面での総会は2019年以来4年ぶりだった.WGの中間会合は2023年11月に金浦(韓国)で開催された(対面withリモート形式).
3.トピックス
2023年度は,ISが1件,TSが3件発行された.
また,2023年9月15日に(一社)情報処理学会短期集中セミナー「デジタル経営を実現するITガバナンスとITサービスマネジメント~国際標準化最前線とJIS化の取り組み~」をオンラインで開催した.講演者は久保淳氏(経済産業省),岡崎靖子,原田要之助氏(情報セキュリティ大学院大学名誉教授),小倉博行氏(日本大学),塩田貞夫氏(洛ITサービス・マネジメント),榎本義彦氏(WG3コンビーナ)で,司会は力利則氏(早稲田大学/未来工学研究所)が担当し,事務局を除いて72名の参加があった.アンケート結果では9割が大変有意義だった・有意義だったとの回答で,好評だった.
- ISO/IEC 38500:Governance of IT for the organization
- ISO/IEC TS 38508:Governance Implications of the Use of Shared Digital Service Platform among Ecosystem Organizations
- ISO/IEC TS 20000-14:Service management—Part 14 Guidance on the application of Service Integration and Management to ISO/IEC 20000-1
- ISO/IEC TS 30105-9:(ITES-BPO) lifecycle processes – Part 9 Guidelines on digital transformation for ITES-BPO organizations
また,2023年9月15日に(一社)情報処理学会短期集中セミナー「デジタル経営を実現するITガバナンスとITサービスマネジメント~国際標準化最前線とJIS化の取り組み~」をオンラインで開催した.講演者は久保淳氏(経済産業省),岡崎靖子,原田要之助氏(情報セキュリティ大学院大学名誉教授),小倉博行氏(日本大学),塩田貞夫氏(洛ITサービス・マネジメント),榎本義彦氏(WG3コンビーナ)で,司会は力利則氏(早稲田大学/未来工学研究所)が担当し,事務局を除いて72名の参加があった.アンケート結果では9割が大変有意義だった・有意義だったとの回答で,好評だった.
4. 日本対応/方針
4-1. WG 1(IT ガバナンス:Governance of IT)
(1) WG1小委員会主査は原田要之助氏が担当している.
(2) ISO/IEC 38500 (組織のITガバナンス)
ISO/IEC 38500は,組織のITの利活用に関するガバナンスの基礎となる規格であり,ISO/IEC 38500シリーズのコアとなる規格である.2023年度は,改訂版のFDIS投票が行われ,その後2024年2月に発行された.FDIS投票で日本は,日本の専門家らによるDISでの意見が取り入れられていることから,内容をより高めるためのコメントをつけて賛成投票した.
(3) ISO/IEC 38501(ITガバナンス- 実践のガイダンス)
ISO/IEC 38500の改訂内容に合わせるため,2023年6月の総会において,スコープは変えずにTRをISに変えて改訂することが決まった.なお,ISOのルールに沿うように改訂版はタイトルを一部変更した.当規格はシステム管理基準の改訂版で参照されていることと将来のJIS候補となることが見込まれており,今後のWD作成において日本は積極的に改訂作業に関与し,貢献する予定である.
(4) ISO/IEC 38505-1(データガバナンス-ISO/IEC38500のデータガバナンスへの適用)
ISO/IEC 38500の改訂内容に合わせるため,2023年6月の総会において,スコープは変えずに改訂することが決まった.なお,ISOのルールに沿うように改訂版はタイトルを一部変更した.日本は,今のところ動向を静観している.
(5) ISO/IEC TS 38508 (ITガバナンス-エコシステムを形成する組織にまたがる共用デジタルサービスプラットフォームの利用に関するガバナンスの影響)
韓国から提案された規格であるが,2023年度日本は,CDレビューにおいて技術コメントを含む30以上のコメントを出し,DTS投票では重要な問題があったため(①FDIS投票を通過済みの改訂版ISO/IEC 38500と齟齬がある,➁個人情報保護法や他規格の要求事項を持ち出しており,ガイダンスという38500シリーズのコンセプトに合わない,③マネジメント層について書きすぎている),コメントを付けて反対投票した.
(6) サーベイの実施
2023年11月の中間会合で日本から,ISO/IEC 38500の各国利用状況を調査するサーベイの実施を提案し,タスクグループが発足した(リーダ:岡崎靖子).2023年3月にWG1メンバに対してサーベイを実施し,12ヵ国20名から回答を得た.次のステップは2024年6月の総会で協議する.
(7) SDGs対応の検討
2023年11月の中間会合においてカナダからSDGsの重要性が述べられ,ISO/IEC 38501改訂版にSDG対応を取り込む検討タスクグループが発足した.日本もタスクグループに参加している.
(8) その他
2023年6月の総会においてアイルランドより,CEN/CENELEC (欧州標準化委員会/欧州電気標準化委員会)とのリエゾン構築の提案があった.しかし実際にはその後European Commission (EC), DG Connect, Unit G.1 Data policy and innovationとのリエゾン投票がSC40レベルで行われ,日本は情報不足のためにAbstain投票した.結果的に賛成国多数でECとのリエゾンは締結された.
また,2023年6月の総会において韓国よりITガバナンスに対するSocial InclusionのNP提案があったが,内容がまだ十分ではないため,一旦White paperの方向で進めることとなった.
4-2. WG2(ITサービスマネジメント:Service management – Information technology)
(1) WG2小委員会主査は2023年5月まで八木隆氏(日立)が担当し,2023年6月から青木保壽氏に交代した.
(2) ISO/IEC 20000-1:2018 (情報技術 サービスマネジメント-第一部:サービスマネジメントシステム要求事項)
2023年に当規格に対する発行後5年のSR投票が行われた.日本は,新型コロナウィルスの感染拡大により旧版(2011年版)から2018年版への移行期間が6か月間延長されて2022年3月30日までとなっており,移行してまだ日が浅い組織がある中で次の改訂版の開発を始めるのは早すぎると判断し,Confirm(今回は改訂しない)に投票した.国際でも同様の判断国が多く,結局Confirmと決まった(https://www.iso.org/standard/70636.html#lifecycle).なお,日本は次の改訂では国内意見を反映していく予定である.
また,ISOの方針で当規格を含むMMS (マネジメントシステム規格)に対し,気候変動に関する組織への要求事項を追記する共通アメンダメントが発行されることになり,当規格に対して2024年2月に発行された.
(3) ISO/IEC 20000-10(概念及び用語)
改訂版のDIS投票が行われ,日本は,Directives 違反を指摘してコメント付き反対投票した.
(4) ISO/IEC TS 20000-14(サービスの統合と管理のISO/IEC 20000-1への適用の手引き)
オーストラリア提案の規格で,2023年度はDTS投票が行われた.過去のコメントの対応漏れにより,Copyrightに関する問題が残っていたため日本は反対投票したが,賛成国多数でDTS投票は通過した.DTSコメント処理にてCopyrightの問題は解決され,2023年11月に発行された.
(5) ISO/IEC TS 20000-15(サービスマネジメントシステムにおけるアジャイルおよびDevOpsの原則の適用の手引き)
オランダ提案の規格で,2023年度はDTS投票が行われた.日本は,アジャイルとDevOpsの原則にあるプラクティスをサービスマネジメントシステムに統合する際の参考になるため読者にとって有益と判断し,記述方法などを改善するためのコメントを付けて賛成投票した.
(6) ISO/IEC TS 20000-16 (ISO/IEC 20000-1をベースにしたサービスマネジメントシステムにおける持続性に関する手引き)
カナダからの提案で,ISO/IEC20000シリーズに対するグリーン(環境・持続性)適用の検討タスクが行われていたが,2023年度はタスク結果をもとにCD付きのNP投票が行われた.日本は,規格の作成には賛成であるため 賛成投票したが,添付文書は技術的な問題が多く,CDではなく,まだWDレベルであるとのコメントを付けた.
(7) ISO/IEC TR 20000-17(ISO/IEC 20000-1:2018をベースにしたサービスマネジメントシステムの実践適用のためのシナリオ)
当規格は,ISO/IEC 20000-1の改訂に関して国際会議で検討した際に同パートに不足しているということから発生した内容で,将来的にISO/IEC 20000-2(サービスマネジメントシステムの適用の手引)などの他パートに含められていく可能性がある.2023年6月の総会で開発が合意され,その後のCDレビューで日本は,技術的コメントを含めて40件弱のコメントを出した.
4-3. WG3(IT を使用したビジネスプロセスアウトソーシング:IT Enabled Services-Business Process Outsourcing(ITES-BPO))
(1) WG3小委員会主査は清水裕子氏が担当した.なお,委員数の減少により,当委員会は2024年3月で閉鎖し,SC40専門委員会に統合することとなった(2024年4月の規格役員会で決定).
(2) ISO/IEC 30105-1(プロセス参照モデル),30105-2(プロセスアセスメントモデル),30105-3 (測定フレームワーク及び組織成熟度モデル),30105-5(ガイドライン)の改訂版
2016年に発行したパート1~5の初版の不具合修正とその後改訂された関係規格の内容を反映するため,2019年より改訂版の開発が始められていたが,2023年度はDIS投票まで進んだ. 日本は,これらのDIS投票の際,内容をより高めるためのコメントをつけて賛成投票した.(補足:30105-4 (主要な概念)の改訂版は,一足早く2022年11月に発行済み)
(3) ISO/IEC TS 30105-9(DXをサポートするための成熟度アセスメントに関するガイドライン)
中国提案により,ISO/IEC 30105(ITES-BPOライフサイクルプロセス)シリーズの拡張規格として開発された.2022年度にDTS投票まで終わっており,2023年6月に発行された.
(4) その他
新規格の提案がいくつかあり,担当者がNP準備中である.日本は今のところ静観している.
5. その他
SC40の担当規格一覧やSC40の紹介は下記に掲載されている.
https://www.iso.org/committee/5013818.html
https://committee.iso.org/home/jtc1sc40
また,上記に加えてSC40とSC42のJWG1で開発されたISO/IEC 38507:2022(AIの利活用が組織のガバナンスに与える影響)がSC42の傘下にあり,JIS化の作業中である.
https://www.iso.org/committee/5013818.html
https://committee.iso.org/home/jtc1sc40
また,上記に加えてSC40とSC42のJWG1で開発されたISO/IEC 38507:2022(AIの利活用が組織のガバナンスに与える影響)がSC42の傘下にあり,JIS化の作業中である.