SC 40 専門委員会 (ITサービスマネジメントとITガバナンス)

第1 種専門委員会

SC 40 専門委員会(IT サービスマネジメントと IT ガバナンス/IT Service Management and IT Governance)

<2021年度委員会活動報告>

委員長 岡崎 靖子(早稲田大学・グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所)

1. スコープ

 この SC は、組織の中で経営の観点からITをどう有効にかつ効率よく活用していくかを扱う「IT ガバナンス」と組織内でどうITを効率的に運用するかを示す「IT サービスマネジメント」を担当する.2013年11月のJTC 1総会で設立が承認され、2014年2月に活動を開始した.ITガバナンス、ITサービス管理(ISO/IEC 20000シリーズ)及びITを使ったビジネスプロセスアウトソーシング(ISO/IEC 30105シリーズ)に関連する標準、ツール、枠組み、ベストプラクティス及び関連する文書の作成を行う.IT活動領域には、監査、ディジタルフォレンジック、ガバナンス、リスクマネジメント、アウトソーシング、サービス運用及びサービス維持が含まれるが、SC 27及びSC 38の適用範囲及びその既存の業務によってカバーされる項目は除外される.

2. 参加国

 幹事国はオーストラリア.2017年1月より議長はJan Begg氏(オーストラリア)(2期目)、コミッティ・マネージャはSuba Ananth氏(オーストラリア)である.参加国はP-メンバ34か国(主な参加国は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、フランス、インド、アイルランド、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ポルトガル、南アフリカ、スペイン、英国、米国、日本)、O-メンバ22か国である(2022年9月現在).WG 1のコンビーナは2019年1月より2021年12月までGyeung-min KIM氏(韓国)が担当したが、任期終了に伴い2022年1月よりRay Walshe氏(アイルランド)に交代した.WG 2 のコンビーナは2018年1月よりSuzanne Van Hove氏(米国)が、WG 3のコンビーナは2018年1月より榎本義彦氏が2期目を担当している.総会は2021年6月にオンラインで開催された.WGの中間会合は2021年11月にオンラインで開催された.

3.トピックス

 2021年度は、ISが1件(ISO/IEC 38503)、TSが4件(ISO/IEC TS 38505-3、ISO/IEC TS 20000-5、ISO/IEC TS 20000-11、ISO/IEC TS 30105-6)発行された.なお、ISO/IEC 38503(ITガバナンスのアセスメント)のプロジェクト・エディタを原田要之助氏(情報セキュリティ大学院大学名誉教授)が担当した.ISO/IEC 30105-4(ビジネスプロセスアウトソーシング・ライフサイクルプロセス-用語と概念)改定版のコ・エディタを清水裕子氏が担当している.
 SC40の発足から時間が経過し、業界や関係する他のSCの状況が変化しているため、当初定めたSC40のスコープの定義を見直してはどうかという提案が英国からあがり、他SCと重複しないように配慮しつつ、新スコープを検討中である.

4. 日本対応/方針

a)WG 1(IT ガバナンス:Governance of IT)

 WG1では、日本が提案したISO/IEC 38503を2022年1月に発行した.本規格は、組織の経営層がITを利用して適切な経営を実施しているかについて評価するガイドラインを提供している.本規格は、国内で利用されることが想定されるため、 翻訳してJIS化する予定である.
 また、ISO/IEC 38500(ITガバナンス)の改定版を開発中で、2021年度はCDまで進んだ. ISO/IEC 38500は、経済産業省のシステム管理基準(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/sys-kansa/h30kaitei.html)で参照されるなど、現在の版のモデルが国内で利用されているため、日本は改訂版においてモデルの形は大きくは変えないように主張した.
 WG1では、この他にISO/IEC TS 38505-3(データ分類のガイドライン)を2021年12月に発行し、ISO/IEC TS 38508(エコシステムを形成する組織にまたがる共用デジタルサービスプラットフォームの利用に関するガバナンスの影響)を開発中である.
 SC40とSC42のJWGで開発したISO/IEC 38507(IT ガバナンス- 組織による人工知能の利活用のガバナンスへの影響)に関しては、CD投票まではSC40とSC42がそれぞれ投票し、DIS投票からはSC42のみが投票することになっていたため、DIS投票とFDIS投票の際は、SC40/WG1小委員会のコメントをSC42/JWG1小委員会にお知らせし、日本からの投票コメントに含めていただいた.

b)WG2(ITサービスマネージメント:Service management – Information technology)

 WG2では、ISO/IEC TS 20000-11の改訂版(ISO/IEC 20000-1とITIL®の関係についての手引き)を2021年8月に発行し、ISO/IEC TS 20000-5の改訂版(ISO/IEC 20000-1の実施手引き)を2022年1月に発行した.両パートは、ISO/IEC 20000-1(サービスマネジメントシステム要求事項)をベースにしており、ISO/IEC 20000-1が2018年9月に改訂されたため、その内容に沿うように改訂している.ただし、両パートとも今まではTRであったが、改訂版ではTSに変わった.日本は、従来と同じTRで改訂することが望ましいとコメントしたが、投票の結果、賛成国多数でTSとなっている.また、オーストラリアが提案したISO/IEC TS 20000-14(サービスの統合と管理のISO/IEC 20000-1への適用の手引き)の開発が始まった.日本は、当規格のベースとなっているSIAMTMの著作権に関する懸念があったため、NP投票の際は反対投票したが、投票の結果、賛成国多数で開発が決まった.
 上記の他に、WG2では、ISO/IEC TR 22446:2017をWithdrawし、WDを開発中だったISO/IEC 24286の開発プロジェクトをキャンセルした.これらの規格は、もともとはWG4が開発していたもので、2020年8月のSC40総会にてWG4がWG2に統合されることになったため、WG4からWG2に移行された規格である.WG2にて内容を見直し、各国投票を経て今回の整理に至った.

c)WG3(IT を使用したビジネスプロセスアウトソーシング:IT Enabled Services-Business Process Outsourcing(ITES-BPO))

 WG3では、ISO/IEC 30105(ITES-BPOライフサイクルプロセス)シリーズを拡張するISO/IEC TS 30105-6(リスクマネジメントに関するガイドライン)を2021年10月に発行した.ISO/IEC 30105-8(継続的なパフォーマンスの改善)はDIS投票まで進んだ.日本は、ISO/IEC 30105-8のDIS投票では、ドラフト文書に改善が必要と判断する箇所があったため、反対投票をした.また、中国が提案したISO/IEC TS 30105-9(DXをサポートするための成熟度アセスメントに関するガイドライン)の開発が始まった.WG3では、その他にISO/IEC 30105-1(プロセル参照モデル)、2(プロセスアセスメントモデル)、3(メジャーメントフレームワークと組織成熟度モデル)、4、5(ガイドライン)の改訂版を開発中である.主に初版の不具合修正と初版発行後に改訂された関係規格の内容反映を目的としている.
 さらにISO/IEC 30105-3とISO/IEC 30105-4のJIS原案を作成した.これらのJIS(JIS Y 30105-3とJIS Y 30105-4)が発行されれば、ISO/IEC 30105シリーズの主要パートの翻訳JIS(JIS Y 30105-1、 2、3、4)が揃うことになる.

5. その他

a)担当規格一覧 (2022年9月現在)

(WG 1)
ISO/IEC 38500:2015、ISO/IEC TS 38501:2015、ISO/IEC TR 38502:2014、ISO/IEC 38503:2022、ISO/IEC TR 38504:2016、ISO/IEC 38505-1:2017、ISO/IEC TR 38505-2:2018、ISO/IEC TS  38505-3:2021、ISO/IEC 38506:2020、ISO/IEC 30121:2015
開発中:ISO/IEC 38500改訂版、ISO/IEC TS 38508

(WG 2)
ISO/IEC 20000-1:2018、ISO/IEC 20000-2:2019、ISO/IEC 20000-3:2019、ISO/IEC TS 20000-5:2022、ISO/IEC 20000-6:2017、ISO/IEC TR 20000-7:2019、ISO/IEC 20000-10: 2018、ISO/IEC TS 20000-11:2021、実践ガイド:2019
開発中:ISO/IEC TS 20000-14、ISO/IEC TS 20000-15

(WG 3)
ISO/IEC 30105-1:2016、ISO/IEC 30105-2:2016、ISO/IEC 30105-3:2016、ISO/IEC 30105-4:2016、ISO/IEC 30105-5:2016、ISO/IEC TS 30105-6:2021、 ISO/IEC TR 30105-7:2019
開発中: ISO/IEC 30105-8、 ISO/IEC TS 30105-9
ISO/IEC 30105-1改訂版、ISO/IEC 30105-2改訂版、ISO/IEC 30105-3改訂版、ISO/IEC 30105-4改訂版、 ISO/IEC 30105-5改訂版

(SC40とSC42とのJWG:SC42/JWG1)
ISO/IEC 38507:2022

URL
https://www.iso.org/committee/5013818.html
https://committee.iso.org/home/jtc1sc40