SC 38専門委員会 (クラウドコンピューティングおよび分散プラットフォーム)

第1 種専門委員会

SC 38専門委員会 (クラウドコンピューティングおよび分散プラットフォーム/Cloud computing and distributed platforms)

<2025年度委員会活動報告>

委員長 鈴木 俊宏(産業技術総合研究所)

1.スコープ(担当範囲・目的)

ISO/IEC JTC 1/SC 38 は,クラウドコンピューティングやデータスペースといった分散プラットフォームの分野における以下のような国際標準化を担当している.
  • 基本的な概念と基礎技術
  • 運用上の問題
  • クラウドコンピューティングシステム間や他の分散システムとの相互作用
クラウドコンピューティング,分散プラットフォーム,およびこれらのテクノロジに焦点を当て,それらの技術領域の標準化活動を推進し,様々なアプリケーション領域のイネーブラーとして機能する.また,SC 38 は,JTC 1,IEC,ISO,およびこれらの分野の規格を開発するその他の団体にガイダンスを提供する.

2.国内活動内容

(1)開催状況

基本的に月一回,オンラインの専門委員会を開催し,SC 38関連のプロジェクトに関する審議を実施している.重要案件については必要に応じアドホック会議を開催し,集中審議に努めている.また,SC 38専門委員会ではSC 38関連のプロジェクトに限らず,SC 38に関連する政策の共有,SC 38総会に向けた対処方針,各国の状況,などを話し合っている.
主な参加者については情報規格調査会に問い合わせのこと.
 

(2)主な審議事項

  • ISO/IEC FDIS 20151-1 Cloud computing and distributed platforms — Dataspaces — Part 1: Concepts and characteristics
  • ISO/IEC FDIS 19941-1 Cloud computing — Interoperability and portability — Part 1: Overview, terminology and concepts
  • ISO/IEC DIS 26450, Cloud computing and distributed platforms — Eclipse Dataspace Protocol
  • ISO/IEC DIS 26451, Cloud computing and distributed platforms — Eclipse Decentralized Claims Protocol
  • ISO/IEC CD 20996 Cloud computing — Cloud service customer business continuity and resilience
  • ISO/IEC CD 22678 Cloud computing — Guidance for policy development
  • ISO/IEC CD 11034 Cloud computing — Trustworthiness in cloud computing
  • ISO/IEC WD TR 25849 Cloud computing — Using cloud computing as part of critical infrastructure
  • ISO/IEC AWI TR 25850 Cloud computing and distributed platforms — Use cases for dataspaces
  • ISO/IEC AWI 20151-2 Cloud computing and distributed platforms — Dataspaces — Part 2: Trust frameworks
  • ISO/IEC AWI 26191 Cloud computing — Cloud computing support for AI services

(3) 特記事項

「(2)主な審議事項」にはPWIについて掲載していない.ISOのPWI非公開の原則から割愛する.
一般にクラウドコンピューティングや分散プラットフォームは,グローバルで国際的に共通なインフラストラクチャやプラットーフォームを提供する.したがって,SC 38専門委員会では,国策展開への影響など,国内の事情を鑑み,国内市場,国際展開する企業に影響を及ぼす可能性があるプロジェクトを優先的に対応している.

3.国際会議へのアウトプット

①主な提出文書

  •  ISO/IEC CD 20996 Cloud computing — Cloud service customer business continuity and resilience
東日本大震災に代表される「大規模自然災害」およびCOVID-19をはじめとする「パンデミック」に対する事業継続計画(BCP)に関する考慮事項を提出した.
  •  ISO/IEC AWI TR 25850 Cloud computing and distributed platforms — Use cases for dataspaces
経済産業省「ウラノス・エコシステム・プロジェクト制度」で公開されている事例を参照しユースケース2件を登録した.
  • ISO/IEC WD TR 25849 Cloud computing — Using cloud computing as part of critical infrastructure
プロジェクトエディタとして,経済安全保障推進法における特定社会基盤事業者を対象とし,「基幹インフラの安定的な提供に関する制度」において政府が指定する14業種(特定社会基盤事業)を踏まえ,クラウドコンピューティング利用について,基幹インフラ事業者にとって追加的な考慮事項案を提示する.
 

②国際会議での貢献

SC 38の総会は年2回開催される.一方,WG(作業部会)分科会は,プロジェクトごとに原則として2週間から1か月ごとの頻度で2時間程度のオンライン会議が設定・実施されており,今年度の参加回数は延べ120回を超えている.会議では積極的に意見を表明するなど国際への関与強化に努めている.

4.課題

①国際標準化活動の推進体制における課題

専門人材の不足が顕著であり,また国際会議に参加する人材も限られていることから,国際規格開発を戦略的に主導するような攻めの活動を十分に展開できず,規格案への対応や意見表明を中心とした守りの対応にとどまっている.

 

②国際標準化を取り巻く国際状況における課題

SC 38の技術領域は,グローバルに適用可能な共通の国際規格を提供することが大前提である.しかし近年,EU Data Actなどに代表される欧州における法規制の影響力が強まり,その動向が国際標準化にも及んでいる.この傾向は,欧州市場を対象とする日本企業にとっては一定のメリットがある一方で,日本の法規制を前提とした産業活動や標準化戦略との整合性を損うことも否めず,結果として日本にとって阻害要因となる可能性があることに留意する必要がある.
 

5. 次年度の予定(見通し・計画)

①出版予定の規格案(日本がプロジェクトエディタを務める規格案)

  • ISO/IEC TR Cloud computing — Using cloud computing as part of critical infrastructure


②国際会議への参加予定

  • SC 38総会(セント=ドニ〔パリ近郊〕,2026年9月)
  • SC 38総会(開催地未定,2027年3月)

総会期間中にもWG,AG会議が実施されるが,大半はリモート会議にて開催される.現時点では会議数は予測出来ないが150回は超えると予想される.