SC 37 専門委員会 (バイオメトリクス)

第1 種専門委員会

SC 37 専門委員会(バイオメトリクス/Biometrics)

<2021年度委員会活動報告>

委員長 坂本 静生(日本電気株式会社)

1. スコープ

 アプリケーションやシステム間の相互運用性とデータ交換を支援するための,人に関する汎用的なバイオメトリクス技術の標準開発.汎用バイオメトリック規格には,共通ファイルフレームワーク,バイオメトリック・アプリケーションプログラミングインターフェイス,バイオメトリックデータ交換形式,関連するバイオメトリックプロファイル,バイオメトリクス技術への評価基準の適用,性能試験と報告のための方法論,管轄をまたがる社会的側面を含む.
 ISO/IEC JTC 1/SC 17におけるカードおよび個人認証へのバイオメトリクス技術の適用に関する作業は除外する.
 ISO/IEC JTC 1/SC 27におけるバイオメトリックデータ保護技術,バイオメトリックセキュリティ試験,評価,評価方法に関する作業は除外する.

2. 参加国

a) 参加国(Pメンバ):オーストラリア・オーストリア・カナダ・中国・デンマーク・フィンランド・フランス・ドイツ・インド・イスラエル・イタリア・日本・カザフスタン・大韓民国・マレーシア・ニュージーランド・ノルウェー・ポーランド・ポルトガル・ロシア・シンガポール・南アフリカ・スペイン・スウェーデン・スイス・ウガンダ・ウクライナ・英国・米国 計29ヵ国.この他Oメンバ 20ヵ国.

b) 幹事国:米国

c) 議長:米国

d) 日本からのエディタ引き受け状況等:エディタ9件・コエディタ15件・TC68/SC2,SC8リエゾン.

3.トピックス

a) 拡張可能なバイオメトリックデータ交換形式であるISO/IEC 39794シリーズは,指紋画像について法執行機関用データ交換形式との互換性向上のためのISO/IEC 39794-4.Amd.1,指紋特徴点に関するISO/IEC 39794-2の開発を進めている.

b) バイオメトリックセンサへ偽の物体等を提示して誤認証させる攻撃の評価方法であるISO/IEC 30107シリーズを,パート1は適合性評価機関・パート4はFIDO Alliance等の意見を取り入れながら改定中である.

c) AIにおけるバイアスのひとつとして取り上げられることがある,性別や人種等の人口統計群に依存するバイオメトリック精度の系統的誤差評価であるISO/IEC 19795-10の審議が進行中である.人口統計群の定義を含めた慎重な検討を行っている.

d) 日本が提案した,従来よりも少ないサンプル数でより高い精度の算出を可能とするISO/IEC 5152は,審議を重ねて技術的な課題もほぼ解決しつつあるところである.

e) 欧州AI法が規定するハイリスクアプリケーションのひとつ,バイオメトリック識別システムの整合規格であるISO/IEC 9868は,欧州AI法施行予定の約1年前にあたる2024-25年の成立を目指して審議中である.

4. 日本対応/方針

 実務で必要となる規格を真摯に開発していくことを念頭におき,IC旅券・提示攻撃・人工知能固有の課題に関連する規格の完成度を高めていく.さらに,現代のバイオメトリクス技術がその精度を大きく高めたことの結果,評価用サンプル収集コストが課題となっていることを踏まえた新しい規格の提案と開発を進めていく.

5. その他

 バイオメトリクス技術が社会に定着しつつあるところ,社会実装に必要な規格のタイムリーな開発が継続してできるよう,新しい世代を委員として迎えていけるように業界やアカデミアへとアピールしていく.