SC 31 専門委員会 (自動認識及びデータ取得技術)

第1 種専門委員会

SC 31 専門委員会(自動認識及びデータ取得技術/Automatic Identification and Data Capture Techniques)

委員⾧ 渡辺 友弘((株)デンソーウェーブ)

1. スコープ

 SC 31 は自動認識及びデータ取得技術を標準化の対象としている.具体的には,1 次元バーコード,2 次元バーコード,RFID 及びその関連機器,システム の標準化を担当している.
 従来は,サプライチェーンにおける物流の効率化を目的とした自動認識技術(1 次元/2 次元バーコード,RFID)のみがスコープであったが,それらのアプリケーションへの適用を加え,スコープを拡張した.

2. 参加国

 SC 31 は, 
  • P メンバ:24 カ国(オーストリア,ベルギー,カナダ,中国,デンマーク,フィンランド,フランス, ドイツ,インド,アイルランド,イスラエル,日本, 韓国,ルクセンブルク,モーリタニア,オランダ, ペルー,ロシア,スロバキア,南アフリカ,スウェーデン,スイス,英国,米国)
  • O メンバ:26 カ国(アルゼンチン,ボスニア・ヘルチェゴビナ,コロンビア,チェコ,ガーナ,香港, ハンガリー,インドネシア,イラン,イタリア,カザフスタン、ケニア,マレーシア,ニュージーランド,パキスタン,フィリピン,ポーランド、ルーマニア、セルビア,シンガポール,スロベニア,スペイン,タイ,トルクメニスタン,ウクライナ)
で構成されている.
 幹事国は米国が担当し,議⾧は米国 ANSI から任命されたベルギーの Henri Barthel 氏である.現在,日本からは,渡辺友弘が,長方形 MicroQR コード(rMQR) の標準規格 ISO/IEC 23941,QR コードの標準規格 ISO/IEC 18004 をはじめ,ISO/IEC 16480 及び ISO/IEC 24720 のプロジェクトエディタと,用語のラポーターを務め,また今井博行が,バーコード読み取り機、バーコード印刷機の評価規格 ISO/IEC 24458 のプロジェクトエディタを務めている.

3.トピックス

3.1 WG1日本プロジェクト

2018 年末に日本から新規提案し,2019 年 3 月に新規案件として正式に承認され開発が始まった長方形MicroQR コードシンボル仕様は,2021 年 3 月に DIS 投票段階へと進んでいる.この長方形 MicroQR コードは,自動車部品への直接印字,電子部品の製品パッケージングへの印字,化粧品,タバコ,酒類,OTC 薬 などへの二次元コードの印字において,高さ寸法が制限されるマーキング環境でより多くのデータを格納したいという産業界の要望に応える規格であり,特に国内でのニーズが高い.またもう 1 案件,2019 年の総会にてプレゼンテーションし,その後新規プロジェクト提案を行い,開発を進めているバーコード読み取り機、バーコード印刷機の評価規格(JIS 規格(JISX0527)として成立している規格:Bar code printer and reader performance testing)についても,2020 年に CD 開発が終了し 2021 年 3 月に DIS 投票段階へと進んでいる.

3.2 日本が PL を務めるプロジェクトの進捗

 2018 年に,ISO TC122/WG12 からのサプライチェーンでの RFID 利用規格 ISO 1736x シリーズ移管受け入れのための CIB 投票と改定作業開始のための CIB 投票が行われ,6 月の総会で承認決議された.この ISO 1736x シリーズは,日・米・欧の自動車業界団体 JAIF(Joint Automotive Industry Forum)の要望を受け TC122 において日本主導で改訂作業を進めようとしていたもので SC31 移管後もそれを引き継ぎ,移管時に日本が PL に指名され WD を作成し配信し改定作業を開始したが,2019 年に指名した PL が健康上の都合で退任することとなり, PL を米国自動車業界団体 AIAG(Automotive Industry Action Group)の Bill Hoffman に引き継いだ.日本は PL こそ外れたものの新 PL とは改定提案時から連携しており JAIF の要望の反映作業を PL とともに主体的に進めている.2020 年には 2021 年 3 月にはシリーズで先行する 17367(製品)の CD 開発が終了し DIS 投票への移行が,また続く 17364(RTI),17365(ト ランスポートユニット),17366(製品包装)が WD 開発を終了し CD 投票への移行が決定している.

3.3 他国からの新規提案

 中国からの AIDC 技術の応用に関する新規規格提案が積極的に行われている. WG8 にて中国より,服に固有 ID 情報を持たせ,IoT 化で服のデザイナーから製造業者,輸送業者,販売,消費者,リサイクル業者までのすべてのステイクホルダで情報共有する仕組み Connected Clothing の規格案と,建築材を ID で管理(寸法などの固定情報と生産情報を ID と紐づけ)し建築効率を高めるガイドライン規格案の 2 件が 2019 年に提案され 2020 年には Adhoc が設置されその検討が進められた.建築材を ID で管理する規格案についてはコロナの影響もあり目立った進捗は無かったが,一方の Connected Clothing 規格案については 2021 年 3 月の WG8 会議にて検討結果が報告され NWIP へ進めることを WG 決定した.

3.4 用語集の改定準備

 2016 年に発行された,日本がラポーチャーを務める AIDC 用語集 ISO/IEC19762 に対し,2021 年の SR での改定を前提に,2019 年に渡辺をチェアとする ad hoc にて事前作業を開始した.SR では現状 ISO/IEC19762 は英語,仏語,独語,露語,韓国語が併記されている規格に日本語と必要な新用語を追加し改定を行う予定であったが,多言語併記の規格が煩雑であることから,2020 年の総会にて ad hoc チームより英語のみにすることを提案し CIB 投票にて各国の賛成の意向を確認した.その結果を踏まえ 2021 年総会後より SR 改定作業を開始する予定である.

4. 日本対応/方針

4.1 暗号方式に対する対応

 RFID のセキュリティ機能として,RF タグとリーダ/ライタ間の通信プロトコルであるエアインタフェースに対して多数の暗号方式が提案されている.日本 としては,提案される暗号方式については,SC 27 での評価が定まったものであるべきであり,また,多数の暗号方式を標準化しても市場の混乱を招くものとして,これまで投票案件に対しては〔棄権〕で対処してきた.しかし実際に暗号方式を実装した RFID チップの市場導入が始まったことから,市場に導入された方式については〔賛成〕していく.

5. その他

5.1 JTC 1/SC 41(IoT)との連携

2017 年に IoT の標準化を担当する SC 41 が設置された.以前から SC 31 で開発している規格の応用分野として IoT への関心は高く,主要国からの SC 31 参加者が SC 41 に多く参加している.SC 31 専門委員会としても 2017 年度より SC 41 専門委員会と情報交換しながら対応を始めている.