SC 23専門委員会 (情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体)
第1 種専門委員会
SC 23専門委員会 (情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体/Digitally recorded media for information interchange and storage)
<2025年度委員会活動報告>
委員長 星沢 拓(㈱日立製作所)
1.スコープ(担当範囲・目的)
SC 23は、情報交換および保存のための着脱可能なディジタル記録媒体に関する標準化を担当しており、光記録、ホログラフィック記録、磁気記録およびフラッシュメモリ技術を対象とする.また、関連するデータの可逆圧縮アルゴリズム、ヴォリュームおよびファイル構造、ディジタル記録媒体の寿命推定方法、ならびにエラー監視方法の標準化も活動範囲としている.
2.国内活動内容
(1)開催状況
2025年度は,計8回の委員会を開催した。開催形式は,機械振興会館(東京都港区)での対面参加とオンライン参加を併用するハイブリッド形式とした。各回には,委員長,委員(国際委員長含む),エキスパート,アドバイザおよび事務局から約12名が参加し,SC 23に関する国内審議および国際標準化対応を行った。
(2)主な審議事項
2025年度は,SC 23における国際標準化活動および関連する国内対応について,主に以下の事項を審議した。
- フラッシュメモリの高信頼化に資する疑似SLC(pSLC: pseudo single-level cell)技術の国際標準化に向けたPWI(予備作業項目)およびNP(新規業務項目)提案の検討
- BD物理規格およびデータマイグレーション規格に関するAmendment(追補)の開発および審議
- JTC 1/WG 15における用語規格の改定作業への対応
- SC 23が担当する既存規格のSystematic Review(SR)に対する国内回答方針の審議
3.国際会議へのアウトプット
①提出文書・コメント
SC 23における国際標準化活動に対し,以下の提案文書および国内コメントを提出した。
- 疑似SLCフラッシュメモリに関するPWI登録提案
タイトル: Information technology — Definition and characteristics of pseudo single-level cell operation in multi-bit flash memory
概要: AI時代に向けた取組として,マルチビットフラッシュメモリにおける疑似SLC動作の特性定義および評価方法に関する標準化を提案した。新たな標準化開発に着手するため,PWIとしての登録および国際アドホックグループ(AHG 1)の設立を提案した。
- JTC 1/WG 15(用語規格)に対するPart 12改定提案
タイトル: JNB contribution on amendment of Part 12 terms in ISO/IEC 2382:2015, Information technology — Vocabulary
概要: JTC 1/WG 15で進められている用語規格「Information technology — Vocabulary」の改定作業に対応し,SC 23が担当する「Part 12: Data media and storage」に関する用語定義および編集上の修正を反映するよう提案した。
- SRに対する国内コメント提出
5年ごとに実施される国際規格の定期見直し(SR)に対し,国内市場における流通実態および利用継続の必要性を確認した上で,日本としての投票方針および具体的な修正コメントを計11規格に対して提出した。
②国際会議での貢献
日本発の提案を国際標準化プロセスに反映させるため,提案文書の作成,国際審議への対応,および規格開発に向けた編集作業に貢献した。
- 疑似SLCフラッシュメモリ標準化に向けた討議用草案の作成
2025年11月に,提案した疑似SLCフラッシュメモリに関するPWI登録およびAHG 1の設立が承認された。これを受け,当委員会は,NP提案に向けた討議用草案の作成を主導した。
- BD物理規格、および光ディスクのデータマイグレーション規格のAmendment開発
ISO/IEC 30190, 30191, 30192およびISO/IEC 29121に含まれる技術的または編集上の不整合を修正するため,Amendment開発に向けた検討を行った。また,プロジェクトエディタの選出を含め,開発を進めるための体制整備に貢献した。
- ISO/IEC 2382(用語規格)改定
JTC 1/WG 15に対する用語改定提案が承認されたことに伴い,SC 23が担当するPart 12の改定作業に対応した。当委員会の委員がエディタに就任することとなり,起草および編集作業を担う体制を整えた。
- 提案の採択状況
疑似SLCフラッシュメモリに関するPWIについては,2025年11月締切の委員会内部投票(CIB)の結果,3か国から承認投票を得て,PWI登録が承認された。あわせて,当委員会委員をコンビナーとするAHG 1の設立も承認された。
JTC 1/WG 15におけるISO/IEC 2382 Part 12(ISO/IEC 2382-12)の用語改定については,当委員会が提出した改定要求書および修正案がSC 23内のCIB投票で承認され,WG 15へ正式に提出された。その後,WG 15において本要求が承認され,ISO/IEC 2382-12の改定作業を開始することが合意された。
③成果・影響
日本からの提案および技術的視点を,SC 23における国際標準化活動に反映する成果を得た。
- 国内意見の反映
BD物理規格および光ディスクのデータマイグレーション規格については,SR回答時に具体的な修正コメントを提示することで,Amendment開発へつなげる道筋を示した。
ISO/IEC 2382の用語改定については,当委員会が主導してSC 23担当領域の改定提案を行い,Part 12を改定対象に含める国際合意の形成に貢献した。
- 規格案の方向性への寄与
疑似SLCフラッシュメモリの標準化については,PWI登録およびAHG 1の設立が承認され,日本主導で国際審議を進めるための基盤を整えた。
また,AHG 1において,規格タイトルを「Information technology — Definition and characteristics of pseudo single-level cell operation in multi-bit flash memory」とする方針を確認した。さらに,NP提案に向けて,疑似SLCの動作特性に関する用語定義,ならびにエンデュランスおよび転送速度等の特性要求を中心とする規格化の基本方針を整理した。これにより,次年度以降の国際標準案作成に向けた技術的基盤を構築した。
4.課題
①国内審議における課題
国内審議においては,フラッシュメモリ・SSD分野の専門人材の確保と,国内意見集約体制の維持が課題である。
疑似SLCフラッシュメモリ等の新規標準化テーマを推進するには,国際標準化文書の起草や国際審議を主導できる専門家が必要である。しかし,従来から活動を支えてきたエキスパートの高齢化が進んでおり,将来的にプロジェクトリーダーやエディタを担う次世代人材の育成が重要となっている。
また,ストレージ市場の変化に伴い,標準化活動に参画する国内企業は減少傾向にある。このため,仕様策定に必要な技術意見の集約や実証データの収集を継続的に行う体制の確保が必要である。
②国際会議における課題
国際会議においては,SC 23のPメンバ国数が限られていることに加え,国際審議への実質的な参加国が限定的であることが課題である。
SC 23におけるPメンバは7か国と少数であり,国際投票においても多くの国が棄権する傾向が見られる。このため,新規の規格開発に必要な承認を得ることに加え,承認後の規格開発,改定および維持管理を継続する上でも,国際的な関与の不足が課題である。今後は,技術的な議論や対案提示に主体的に参加する国を増やし,国際的な協力体制を強化する必要がある。
また,規格開発において他国からのエキスパート参加が限定的であり,審議の進行や原案作成の負担が日本に集中している。今後は,ドイツ,オランダ,スイス,米国,中国,韓国などの主要国に対し,エキスパート参加を促す働きかけを行い,国際的な合意形成を進める必要がある。
③その他の課題
その他にも関連団体および関連作業グループとの情報共有体制の強化,ならびに当委員会運営に必要なリソースの確保が課題として挙げられる。
疑似SLCフラッシュメモリの特性定義および評価方法の検討にあたっては,IDEMA Japanに加え,半導体・ストレージ分野の関連標準化団体との情報共有や役割分担の整理が必要である。また,ISO/IEC 2382-12の用語改定に対応するため,JTC 1/WG 15との連携を継続し,必要に応じて連絡窓口や対応体制を明確化する必要がある。
委員会運営面では,限られた当委員会委員が複数の標準化プロジェクトを兼任しており,国際対応や編集作業に係る負担が増加している。さらに,2026年6月に東京で開催予定の第23回SC 23総会への対応を含め,国際会議を円滑に運営するための事務局および委員の支援体制を維持することが継続的な課題である。
5. 次年度の予定(見通し・計画)
①審議予定の規格案
疑似SLCフラッシュメモリに関する新規規格開発,BD物理規格および光ディスクのデータマイグレーション規格のAmendment開発,ならびにISO/IEC 2382-12の用語改定を中心に審議を進める。
疑似SLCフラッシュメモリ規格については,名称を「Definition and characteristics of pseudo-SLC Operation in multi-bit flash memory(マルチビットフラッシュメモリにおける疑似SLC動作の定義および特性)」としNP提案を進める予定である。
2026年8月以降にNP投票を開始し、承認後,新規に国際ワーキンググループ(WG 1)を設立して,プロジェクトエディタのもとで規格開発を進める。AHG 1にて作成した討議用草案を元に2026年11月を目標に第1次作業草案(1st WD)を回覧し,2027年5月を目標とする委員会草案(CD)審議に向けて,規格原案の作成を進める。主な審議項目は,用語定義,動作条件,疑似SLC動作特性,要求性能および評価方法である。
BD物理規格および光ディスクのデータマイグレーション規格については,2026年6月に開催予定のSC 23総会にて、以下のAmendment 1の開発を提案し審議を進める。
対象規格:
- ISO/IEC 29121:2021/Amd 1「Information technology — Digitally recorded media for information interchange and storage — Data migration method for optical disks for long-term data storage」
- ISO/IEC 30190:2021/Amd 1「Information technology — Digitally recorded media for information interchange and storage — 120 mm Single Layer (25,0 Gbytes per disk) and Dual Layer (50,0 Gbytes per disk) BD Recordable disk」
- ISO/IEC 30191:2021/Amd 1「Information technology — Digitally recorded media for information interchange and storage — 120 mm Triple Layer (100,0 Gbytes single sided disk and 200,0 Gbytes double sided disk) and Quadruple Layer (128,0 Gbytes single sided disk) BD Recordable disk」
- ISO/IEC 30192:2021/Amd 1「Information technology — Digitally recorded media for information interchange and storage — 120 mm Single Layer (25,0 Gbytes per disk) and Dual Layer (50,0 Gbytes per disk) BD Rewritable disk」
承認後,直ぐにCD審議を行い、2026年11月を目標とするDAM(追補国際規格案)への移行,および2027年5月1日を目標とするAMD(追補)の発行に向けて,プロジェクトエディタを中心に規格化プロセスを進める。
ISO/IEC 2382-12の用語改定については,WD(作業草案)からCD(委員会草案)およびDIS(国際規格案)への移行に向けた審議を行い、JTC 1/WG 15における改定審議に対応する。
②国際会議への参加予定
次年度は,隔年で開催されるSC 23総会に参加し,主要な規格開発案件および委員会運営に関する提案・報告を行う。
2026年6月に開催予定のSC 23総会では,疑似SLCフラッシュメモリに関する規格開発のNP提案,BD物理規格および光ディスクのデータマイグレーション規格に関するAmendment開発の提案,JTC 1/WG 15とのリエゾン関係構築の提案、ならびに今後2年間のSystematic Review(SR)への対応方針を提案する予定である。また,次期SC 23国際委員長の推薦に対応するとともに,日本における国内活動状況を報告する。これにより,SC 23における日本の継続的な貢献を示し,国際標準化活動の推進に向けた合意形成を図る。
SC 23とリエゾン関係を構築するISO/TC 42,ISO/TC 171/SC 1,IEC TC 100/WG 28およびEcma Intermational TC 31との関係を強化する。特に,フラッシュメモリ規格の開発に関連し,技術情報の共有,役割分担の整理,および新たな共同プロジェクトの可能性について検討を進める。
③委員会としての重点事項
次年度の重点事項は,疑似SLCフラッシュメモリ規格のNP承認と規格開発の着実な推進,既存規格のAmendment開発および用語規格改定への対応,ならびに国際標準化活動を継続するための体制強化である。
疑似SLCフラッシュメモリ規格については,NP投票の承認を得るとともに,承認後の規格開発を円滑に進めるため,WD作成に必要な技術論点を整理する。また,国際審議への参加国を増やすため,主要国および関連団体に対してエキスパート参加を促す働きかけを行う。
BD物理規格および光ディスクのデータマイグレーション規格のAmendment開発,ならびにISO/IEC 2382-12の用語改定については,エディタを中心に,国際審議および編集作業に継続して対応する。
委員会運営面では,限られた委員が複数のプロジェクトを兼任している状況を踏まえ,国内審議,国際対応,編集作業および会議運営を円滑に進めるための役割分担を明確化する。また,次世代人材の育成および国内企業・関連団体との連携強化を通じて,国内意見集約体制の維持・強化に取り組む。
