SC 17 国内委員会 (カード及び個人識別用セキュリティデバイス)

第1 種専門委員会

SC 17 国内委員会(カード及び個人識別用セキュリティデバイス/Cards and Security Devices for Personal Identification)

<2024年度委員会活動報告>

委員長  榊 純一

1. 活動概況(SC 17全般及びシンガポール総会)

 

 ISO/IEC JTC 1/SC 17は,カード及び個人識別を主な対象とし,各種カード及び個人識別用セキュリティデバイスの要素技術から利用システム(クレジットカード・IC旅券・運転免許証・モバイルID関連等)までに係わる国際互換性のための標準化と登録管理を担当している。SC 17国内委員会には,国際AG・WG(AG 1, AG 3, WG 1~WG 12)に対応する国内AG・WGに加えて,WG間及び国内関係機関との連携強化を図るためのSWGをWGに設置している。SC 17とこれらのAG・WG及びSWGは,単独または共同で,更に,JBMIA内の関連受託事業委員会を含む各関係委員会・各関係機関と連携して,国際標準化を推進している。

 SC 17のタイトル及びスコープは,SC 17の国際規格が物理的なカード形状を前提としない利用場面にも適用される状況等に対応している。
日本は,後述の国際役職貢献とともに国際貢献の一環として,SC 17国内運営委員会監修の日本国ナショナルレポートをSC 17シンガポール総会に提出した。2024年度は,活動概況の要約のなかで,
 ・JPKIのスマホ搭載
 ・新しいキャッシュレス決済サービスの増加
を報告した。

 引き続き日本意見の反映を優先課題とし,新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のために2019年度から多くの国際会議がオンライン開催となっていたが,2024年度は対面開催やオンラインの併用による会議が多くなっている。後継者育成の機会創出も意識し,SC 17総会と各WG国際会議,TF国際会議,SC間・WG間合同国際会議及びCAG,AG等の各国際会議に委員が積極的に出席し,国際規格の制定活動に貢献した。

 第37回SC 17総会は,2024年10月17日~18日にシドニーにおいて対面+リモートで開催された。同総会では,出席国及びリエゾンの確認・出席者の紹介に続いて,事前配布の議事日程案につき総会の直前までに開催された各WG等国際会議の議長報告を追加のうえ承認した。

 前回のSC 17総会(2023年10月)の各決議及び総会後のCIBによる各決議について,その後の進捗状況を関係AG・WG報告等のなかでレビューし,一部についてはフォローアップの決議を行い,今後の活動計画を承認した。
2024年度を通して,引き続き実装の実現性・後方互換を含む互換性・拡張性・全体的整合性等の観点からの,詳細なレビューと考察及び実験データに基づき日本意見の反映を図るとともに,国内外関係機関と連携して国際標準化の推進に努め,要素技術及びその利用技術とIC旅券・運転免許証等に関する標準化活動を主導した。

 AG 1(発行者識別番号(IIN)の登録管理)では,各国からのIIN取得申請に関するメールベースでの審議に加え,IINの将来的な番号枠枯渇問題への対応に備えた桁数拡張のために改正したISO/IEC 7812(カード発行者の識別)シリーズの普及・定着を図っている。

 WG 1(IDカードの物理的特性及び試験方法)では,カードの向きや種別を識別するためにカード外形にノッチを配置することが提案され,TRとして検討を進める方針となり,WDの審議を開始した。
 
 WG 3(渡航者識別 — 旧,機械可読渡航文書:MRTD)では,WG 3/TF 4(IC旅券の試験方法)で2004年以降日本が引き続き国際コンビナを務め,IC旅券に関する国際互換性確保のための活動を推進している。

 ICAO(International Civil Aviation Organization,国際民間航空機関)ではDigital Travel Credentials(DTC)の検討部会で,現状の旅券形状とは異なるスマートフォン等へのeMRTDアプリケーションの搭載検討が進んでおり,欧州では実証実験が実施されている。また,データの選択開示機能に関する検討が行われており,ICAOの役割範囲(従来は出入国のみが範囲)の検討や発給当局や入国管理へのインパクトアセスメントが必要となっている。世界各国で顔画像による生体認証を用いた自動化ゲートの導入が普及段階を迎えているが,SC 37と共同で開発したISO/IEC 39794(第三世代)の旅券用アプリケーションプロファイルを策定し,2026年1月1日までに国際互換試験を実施して互換を確認,2030年から旅券側で導入開始,移行期間終了までに各国に対応を促す方針となり、互換性・準拠性確認のためにInteroperability testing eventが2024年10月16日にシドニーで、2025年2月14日にシンガポールで開催された。

 将来を見据えた検討として,旅券におけるPost Quantum Cryptography(PQC)の応用に関するスタディーグループがICAO NTWG内に結成された。
WG 4(セキュリティデバイスのための共通インタフェース及びプロトコル:旧,ICカード)では,多くの分野において利用されているセキュリティデバイスのインタフェースを定義するISO/IEC 7816(ICカード)シリーズの第3部の追補(複数論理セキュリティデバイスのサポート),および第8部の追補(耐量子計算機暗号を使用するセキュリティ業務の交換のための相互互換性)が開発され,それぞれ発行に至った。引き続き,発行された第8部の追補から影響を受ける他の標準規格の修正内容や,関連する耐量子計算機暗号の用途等が議論されている。また,WG 4ではセキュリティデバイスのインタフェースだけでなくセキュリティデバイスを応用する環境に対する標準化が活発であり,経済産業省委託事業の成果に基づく日本提案により2017年に設置されたAG 2(バーチャルID及び関連技術,コンビナ:谷内田 益義(東工大),2020年9月目標達成により解散)の成果を含むISO/IEC 23220シリーズ(モバイルデバイスを通じたID情報管理のためのビルディングブロック)の開発が進んでいる。

 WG 8(非接触ICカード)では,近接型非接触ICカード(PICC),近傍型非接触ICカード(VICC)の審議が進められ,プロジェクト・エディタを出すなど日本として国際標準化推進に貢献している。改定に多くの時間を割いていた,ISO/IEC 10373-6(試験方法)の改定作業を終えた。

 WG 9(光メモリカード及びデバイス)は,国際WG 9における既存規格の改正作業が終了し,新規規格の提案も無いことが確認されたため2016年に解散した。なお,WG 9の解散後も残件として制定済みWG 9規格の定期見直し時にStabilization等の確認を継続している。

 WG 10(自動車運転免許証及び関係書類)では,2004年以降日本が引き続き国際セクレタリを務め,WG 10/TF 15(モバイル運転免許証の試験方法)で2019年以降日本が国際コンビナを務め,運転免許証に関する国際標準化を推進している。ISO/IEC 18013-5(mDL:Mobile driving licence)が2021年9月に発行され,日本からプロジェクト・エディタを出したmDL試験方法であるISO/IEC TS 18013-6およびmDLのオンライン提示機能を規定したISO/IEC TS 18013-7も、それぞれ2024年11月、10月に発行された。車両登録証への応用を検討するISO/IEC TS 7367の開発も進められており,WG 4で開発中のISO/IEC 23220シリーズとともに,モバイルIDに関する汎用的な技術標準へと進化しつつある。

 WG 11(カード及び個人識別へのバイオメトリクス応用)では,生体認証用センサ付ICカードやオンカード・バイオメトリック比較等に関する標準規格の改正が審議されている。

 WG 12(UAS免許証及びドローン/UASセキュリティモジュール)では,ステークホルダの国際会議参加が十分でない状態ではあるものの,UAS免許証のための物理的特性と基本データセットを規定するISO/IEC 22460-1およびドローン/UAS識別モジュールを規定するISO/IEC 22460-2が発行され、デジタルUAS免許証を規定するISO/IEC 22460-3もDIS投票に進められた。

2.国内委員会体制の特記事項

 2023年9月1日付で委員長交代が承認され、前任の廣川委員長はアドバイザーとして継続参加することとなった。

 SC 17共通テーマ・複数WG横断テーマについては,日本として一貫性のある対応及び新規提案を可能とするよう関係WG等が連携して検討及び提案を行っている。また,これらの活動を通じて,参画委員・その所属組織・他の関係組織も含めた日本にとってのメリット創出と国際貢献を図っている。

 これまで,SC 17国内委員会の直下にSWGを設置していたが,WG内で検討できる体制が確立したため,SWG A~SWG Cは2024年3月末日で解散した。

 国際WG 4及び国際WG 11への対応体制として,WG 4・WG 11国内委員会を設置し,バイオメトリクス応用案件に関する両WGの連携強化を図っている。また,2020年度にWG 4・WG 11国内委員会に前記ISO/IEC 23220シリーズ対応のためのSWG 10を設置し活動を継続している。

 対応国内委員会が解散済または休会中の,旧国際WG 7(金融取引カード)案件,旧国際WG 9(光メモリカード)案件,WG 12(ドローン関係)案件,AG 3(デジタル・アイデンティティ・ウォレット調査:~2025 SC 17総会)案件及びCAGを含むSC 17共通事項への対応案はSC 17国内運営委員会で策定している。

 また,SC 17国内委員会会議・同運営委員会会議の年間開催予定をITSCJ技術委員会(JTC 1国内委員会)に連動するよう設定することによって,各WG国内委員会での案件審議時間を柔軟に確保できるようにしている。

3.特記事項

年間の活動として日本の意見を国際規格に反映するために注力した主要案件,今後影響を与える可能性のある事項は,次のとおりである。

(1) SC 17における国際役職貢献
 日本が目指す産業競争力強化のために,各種カード及び個人識別用セキュリティデバイスの要素技術から利用システムに係わる提案を行うとともに,日本の技術を国際規格に反映させるため多くの国際役職を務めている。

(2) IC旅券(eMRP)の標準化
 ICAO-TAG/TRIP-NTWG(新技術WG)が標準化しているIC旅券(eMRP)の技術レポート(ICAO TR)作成に,日本委員は外務省と共に積極的に参加して旅券へのPICC(近接型非接触ICカード)を利用した仕様策定に貢献してきた。COVID-19対策としてワクチン接種証明書の標準化を実施し,2021年5月にICAO TR VDS-NC v1.1として発行されている。多くの国でIC旅券内の顔データを用いた顔認証による自動化ゲートの導入が進んでおり,現在は顔画像の新フォーマットへの切り替えのための互換性検証が行われている。今後スマートフォンを用いた非接触プロセスの応用や,ワクチン接種や健康情報の共有を可能にするための標準化などが求められている。日本は試験方法に関するWG 3/TF 4を主導しており,画像フォーマットの変更に伴う国際互換試験の準備を主導している。さらにDTC(Digital Travel Credentials)の検討における技術検討にも主導的な役割を担っている。

(3) バイオメトリクス応用への対応
 引き続きISO/IEC JTC 1/SC 37(バイオメトリクス)・同SC 27(情報セキュリティ,サイバーセキュリティ及びプライバシー保護)等との連携が必要であるとともに,SC 17内でも複数WGの連携が必要であるため,国内の関係活動への影響をも考慮しつつ対応している。

(4) 耐量子計算機暗号への対応
 ISO/IEC 7816-8での対応に関連して,ISO/IEC 7816-4・ISO/IEC 7816-6・ISO/IEC 7816-9を含む複数の規格の修正を検討している。また,暗号アルゴリズムの移行期に発生する複数アルゴリズムの共存状態において効果的に移行を促すための認証方法に関しても継続的に議論している。前項と同様にISO/IEC JTC 1/SC 37・同SC 27等との連携が必要であるとともに,SC 17内でも旅券を担当するWG 3やWG 10など複数WGで既に将来を見据えた耐量子計算機への対応検討が開始されており,国内の関係活動への影響をも考慮しつつ対応している。

4. 2025年度への重要な課題

(1) ISO/IEC 7816シリーズは,APDU(Application protocol data unit)やデータ形式を定める第4部を2013年に改正した後,これを参照する複数の部の改正版が発行されている。一方で改正後の第4部について新たなニーズに対応するための課題も明らかになり再度の改正が合意されたため,引き続きこれをリードしていく必要がある。そのため,日本からプロジェクト・エディタを出している。

(2) 開発中のISO/IEC 23465シリーズ及びISO/IEC 23220シリーズについては,SC 17のスコープに合わせた適切な規格案となるよう注意深い対応を継続している。ISO/IEC 23220シリーズには,日本提案に基づき第6部の追加が承認されており,その開発に注力する。

(3) カード外形へのノッチ配置に関するTR対し,日本市場で流通している仕様を反映させるよう検討を進める。

(4) 米国等が主体となってスマートフォンでの応用を規格化したISO/IEC 18013-5(mDL:Mobile driving licence)およびその追加機能を規定したISO/IEC TS 18013-7が発行されており,国内外の動向を踏まえ後方互換性に配慮しつつ,技術環境の変化に対応するよう日本提案の第6部も含めてISO/IEC 18013(ISO準拠運転免許証)シリーズの規格化を継続する。

(5) 2017年度に新設された国際WG 12は,ドローンに関係するICAO及びISO/TC 20/SC 16等との連携が重要であり,日本はNP投票の段階から国内関係機関との連携と意見調整に基づき対応してきた。その結果を元に関連規格の早期開発完了を図っていく。

(6) ICカード等に関する基本的な要素技術以外で,ISO/IEC 23220シリーズ等のように利用システムに係わる標準化が求められている。その一方で,利用システムからの要求に基づき要素技術についても機能や性能に係わる追加提案が増加する傾向が2025年度も続くと考えられる。今後,カード及びセキュリティデバイスの製造・発行・利用に加え,モバイル環境での個人識別技術の利用に係わる関係機関・関係企業のより積極的な理解と参画を得て,利用者個人も含めた各関係者の利益を考慮しつつ,日本の技術力を踏まえた要素技術と利用技術の両面からの対応を継続していく必要がある。