SC 17 国内委員会 (カード及び個人識別用セキュリティデバイス)

第1 種専門委員会

SC 17 国内委員会(カード及び個人識別用セキュリティデバイス/Cards and Security Devices for Personal Identification)

<2021年度委員会活動報告>

委員長 廣川 勝久

1. スコープ

 ISO/IEC JTC 1/SC 17は,カード及び個⼈識別を主な対象とし,各種カード及び個人識別用セキュリティデバイスの要素技術から利⽤システム(クレジットカード・IC旅券・運転免許証等)までに係わる国際互換性のための標準化と登録管理を担当している.
 英⽂スコープは次のとおりである.
 Standardization in the area of:
  • Identification and related documents,
  • Cards,
  • Security devices and tokens, and interfaces associated with their use in inter-industry application and international interchange

2. 参加国

 Pメンバ33ヵ国,Oメンバ24ヵ国が参加している.幹事国は英国,議⻑はPeter Waggett⽒(英国).⽇本は国際役職貢献として,,WG 3/TF 4(IC旅券の試験⽅法)コンビナ,WG 10(⾃動⾞運転免許証及び関係書類)セクレタリ及びWG 10/TF 15(モバイル運転免許証の試験方法)コンビナを務めている.2021年度には,WG 4(セキュリティデバイスのための共通インタフェース及びプロトコル,旧称ICカード)・WG 8(⾮接触ICカード)・WG 10(前出)・WG 11(カード及び個人識別へのバイオメトリクス応用)・WG 12(ドローン免許証及びドローン識別モジュール)の各WGが担当するWI(作業項⽬)12件のプロジェクト・エディタを務め,SC 17総会決議案起草委員も務めている.

3.トピックス

a) 第34回SC 17総会は2021年10月06日~08日にベルリン(独)で開催される想定であったが,COVID-19のためにバーチャルに変更し次の日程で開催した.

2021-10-06(水) 22:00~24:00 JST
2021-10-07(木) 22:00~24:00 JST
2021-10-08(金) 22:00~24:00 JST

 Agendaの構成はこれまでと同様であるが事前配布の総会資料に基づき審議が必要な項目のみにフォーカスし時間短縮を図った.なお,総会直前の2021-10-06(水) 06:00~08:00 JSTにSC 17/CAG 1(Chairman’s advisory group)をバーチャルで開催し,総会の課題や進め方を調整した.また,第二日終了後の2021-10-07(木)24:00~25:00 JSTにSC 17総会のDrafting Committeeを開催し総会決議案を策定した.

 同総会では,ISO CSのTPM(Technical Programme Manager)からTS及びTRのプロセス変更,JTC 1 Supplement の公開等が紹介された.更に,前回のSC 17バーチャル総会(2020年9月)の各決議及び総会後のCIBによる各決議について,その後の進捗状況を確認した.
各WGの活動状況報告を受け,今後の活動計画を承認するとともに更なる推進のための決議を行った.
国際貢献の⼀環である⽇本国ナショナルレポートとして,活動概況の要約に加えて“個人番号カードの発行の増加(Increase of Issuance of Individual Number Card)” を報告した.

b) 複数WGにまたがるWIであるヒューマン・インタフェース機能付きICカードに関し,⽇本はISO/IEC 18328(ICカードに管理されるデバイス)シリーズの論理的側⾯について仮想的なアーキテクチャを提案し貢献してきた.同シリーズ第2 部(物理的特性と試験方法)にID-1及びID-T以外のカード厚さに対応する非接触ICカード用途限定のID-Bが追加された.

c) カードの⽤途別耐久性に関する評価試験を定めるISO/IEC 24789(カードサービスライフ)シリーズについて,各種試験方法の検証や新しい試験方法の提案を行い,改正に向けた技術的検討を継続している.

d) ICAO-TAG-NTWG(国際⺠間航空機関・新技術WG)が標準化しているIC旅券(eMRP)の技術レポート(ICAO-TR)作成に外務省と共に積極的に参加し,旅券への近接型⾮接触ICカード技術の利⽤に関する仕様策定に貢献してきた.ICAOの協⼒の下,試験⽅法の標準化を進めているWG 3/TF 4のコンビナが榊 純⼀主査から中村 健一主査に交代し引続き日本がリードしている.ICAOのDigital Travel Credentials(DTC)検討部会では,スマートフォン等へのIC旅券アプリケーションの搭載検討が進んでいる.世界各国で顔画像による生体認証を用いた自動化ゲートの導入が普及段階を迎えており,SC 37で開発された顔画像フォーマットのISO/IEC 19794(第一世代)からISO/IEC 39794(第三世代)への移行ガイドラインであるISO/IEC TR 49794がSC 37からSC 17/WG 3に移管されることとなった.

e) 多くの分野で利⽤されているISO/IEC 7816-4(ICカード-第4部:交換のための構成,セキュリティ及びコマンド)は,⽇本提案のPBO(Perform Biometric Operation)コマンドの追加,高速処理を可能とする日本提案に基づく2件の追補を含めた改正が行われ,第4部を参照するISO/IEC 7816シリーズの他の各部(第6部,第8部,第9部,第11部,第15部)も改正版が発行されている.日本提案に基づく第6部を含むISO/IEC 23220シリーズ(モバイルデバイスを通じたID情報管理のためのビルディングブロック)の標準化が進められている.

f) ICカード上で全ての⽣体認証処理を⾏うシステムオンカードに関するISO/IEC 17839シリーズについて,処理中に発⽣する操作時間待ち等を柔軟に制御できるプロトコルの提案を⽇本から⾏い,ISとして発⾏される等実⽤化に貢献している.

g) ISO/IEC 7812(識別カード-発⾏者の識別)シリーズは,カード発⾏者識別番号(IIN)の将来的な番号枠枯渇問題への対応及びIIN登録管理体制の⾒直しを完了し改正版を発行している.⽇本は国内関係者と連携し運用面も含めた意⾒発信や説明資料作成に積極的に関与した.WG 5から分離した常設組織としてのAG 1(旧称,SWG 1)が,IINの登録管理活動を担当している.

h) 近接型⾮接触ICカード(PICC)に関する⽇本提案のDynamic power level management(動的電⼒制御)のための機能拡張は,関係する4部の追補が発行された.また,インタフェース制御⽤パラメータ・PICCクラス定義の明確化,適合性試験計画等の追加を含むISO/IEC 14443(近接型⾮接触ICカード)シリーズの改正に貢献し,近傍型⾮接触ICカード(VICC)の改正審議にも貢献している.

i) ⾃動⾞運転免許証及び関係書類については,榊 純⼀SC 17国内幹事がWG 10セクレタリを,中村 健一WG 10国内主査がWG 10/TF 15コンビナを務めている.国内では既に流通する全ての運転免許証がIC運転免許証になっている。2021年にはスマートフォンでの応用規格であるmDL(Mobile Driving Licence)の規格(ISO/IEC 18013-5)が出版され、米国を中⼼に幾つかの国でmDLの導⼊が進められている.

j) 光メモリカード及びデバイスについては,既存規格の改正作業が終了し新規規格の提案も無いことが確認されたため,担当の国際WG 9を解散し,関係規格を順次スタビライズしている.

k) 国際議⻑・コミッティマネジャ・各コンビナと⼀部のNB(⽇本等)からなる常設組織としてのCAG 1では,SC 17の国際規格が物理的なカード形状を前提にしない利⽤場⾯にも適⽤される近年の状況等にも対応してSC 17の運営を調整している.

l) 国際会議への対応状況は次のとおりである.
 1) SC 17総会(バーチャル開催, ⽇本から8名が出席),参加国数/出席者数: 14ヵ国,3団体,ISO CS/計43名
 2) 各WG等の国際会議(バーチャル開催)
WG 1(3回9名),WG 3(6回4名),WG 4(12回55名),WG 8(5回15名),WG 10(8回25名),WG 11(5回10名),WG 12(6回8名),CAG 1(2回7名),AG 1(案件毎にメール審議により開催),ICAO(3回2名)であった.
なお,WG 10対応については(⼀社)UTMS協会に事務局業務を委託のうえ合同で推進中である.

m) 規格投票件数及び制定数は次のとおりである.

 1) 2021年度中の投票件数
NP: 3件,CD: 9件,DIS: 3件,FDIS: 6件,SR: 6件,CIB: 7件
 2) 2021年度中の発⾏件数
IS発行 新規: 1件,改正: 3件,追補: 6件
TS発行 2件,TR発行 2件

4. 日本対応/方針

a) カード及び個人識別用セキュリティデバイスの要素技術以外に,その利⽤システムに係わる標準化が求められている.同時に,利⽤システムからの要求に基づき要素技術としての機能や性能に係わる追加提案が増加しており,これら両⾯に対応している.

b) 情報技術・半導体技術等の⽇本の技術⼒を背景に, 実装の実現性・後⽅互換を含む互換性・拡張性・全体 的整合性等の観点からの,詳細なレビューと考察及び 実験データに基づき⽇本意⾒の反映を図るとともに, 国内外関係機関と連携し国際標準化を推進している.

c) ISO/IEC 7816シリーズ,ISO/IEC 14443シリーズ等の主要規格には⽇本提案の技術が反映され国際的にも広く活⽤されている.更に,関係技術や利用システムの伸展に合わせた新規提案を⾏っている.

d) ⽣体認証技術・情報セキュリティ技術・無線インタフェース技術等の関連で,JTC 1の関係SCと連携して対応を⾏う場⾯が増加しており,JTC 1/SC 37・SC 27・SC 31・SC 41・SC 6等と連携している.

e) ドローン関係ではICAO及びISO/TC 20/SC 16等との連携が重要であり,日本はNP段階から国内関係機関との連携と意見調整に基づき対応しており,JTC 1/AG 19(Co-ordination with ISO/TC 20/SC 16)にも対応している.

f) ⽇本が⽬指す産業競争⼒強化のために,重点TC/SCのひとつとして,担当分野の要素技術及びその利⽤システムに係わる提案を⾏い,前記国際役職を含めて⽇本の技術を国際規格に反映させている.

5. その他

a) 国際WG 1〜WG 12に対応するWG国内委員会に加え,WG間及び国内関係機関との連携のためのSWG委員会をSC 17直下またはWGに設置しており,関連受託事業委員会等を含め連携を強化している.

b) ⽇本意⾒反映のための国際標準化エキスパート養成に努めるとともに,その環境造りを継続している.

c) 関係機関・関係企業の理解と参画を得て,我が国の技術⼒を踏まえた対応の継続により,一般利⽤者も含む各関係者,参画委員自身とその所属組織を含む⽇本にとってのメリット創出と国際貢献を図っている.

d) 2021年度もCovid-19のため計画済みの各会議がWeb会議化された.2022年度は,総会及び一部のWG国際会議がHybrid会議化される状況になるため日本意見の主張方法を検討しつつ対応していく必要がある.