SC 17 国内委員会 (カード及び個人識別用セキュリティデバイス)

第1 種専門委員会

SC 17 国内委員会(カード及び個人識別用セキュリティデバイス/Cards and Security Devices for Personal Identification)

委員長 廣川 勝久

1. スコープ

  ISO/IEC JTC 1/SC 17 は,カード及び個⼈識別を主な対象とし,各種カード及び個人識別用セキュリティデバイスの要素技術から利⽤システム(クレジットカード・IC 旅券・運転免許証等)までに係わる国際互換性のための標準化と登録管理を担当している.
 英⽂スコープは次のとおりである.
 Standardization in the area of:
  • Identification and related documents,
  • Cards,
  • Security devices and tokens,
and interfaces associated with their use in inter-industry application and international interchange

2. 参加国

  P メンバ 32 ヵ国,O メンバ 23 ヵ国が参加している.幹事国は英国,議⻑は Peter Waggett⽒(英国). ⽇本は国際役職貢献として,AG 2(バーチャル ID 及び関連技術,旧称 SG 2)コンビナ,WG 3/TF 4(IC旅券の試験⽅法)コンビナ,WG 10(⾃動⾞運転免許証及び関係書類)セクレタリ及び WG 10/TF 15(モバイル運転免許証の試験方法)コンビナを務めている. 2020 年度には,WG 4(セキュリティデバイスのための共通インタフェース及びプロトコル,旧称 IC カード)・WG 8(⾮接触 IC カード)・WG 10(前出)・WG 11(カード及び個人識別へのバイオメトリクス応用)・WG 12(ドローン免許証及びドローン識別モジュール)の各 WG が担当する WI(作業項⽬)12 件のプロジェクト・エディタを務め,SC 17 総会決議案起草委員も務めている.

3.トピックス

 a) 第 33 回 SC 17 総会は 2020 年 9⽉23 日~25 日に北京(中国)で開催予定であったが,COVID-19 のためにバーチャルに変更し次の日程で開催した.
2020-09-23(水) 22:00~24:00 JST
2020-09-24(木) 21:00~23:00 JST
2020-09-25(金) 21:00~22:00 JST
Agenda の構成はこれまでと同様であるが事前配布の総会資料に基づき審議が必要な項目のみにフォーカスし時間短縮を図った.なお,総会直前の 23(水)21:00~22:00 JST に SC 17/CAG 1(Chairman’s advisory group)をバーチャルで開催し,総会の課題や進め方を調整した.また,第二日終了後の 24(木)23:00 ~ 24:00 JST に SC 17 総 会 の Drafting Committee を開催し総会決議案を策定した.
 同総会では,Directives Part 1 の主な改定点,JTC1 の状況等について報告があった.更に,前年の SC17 ブレイナード総会の各決議について,その後の進捗状況をレビューし問題の無いことを確認した.
 各 WG の活動状況報告を受け,今後の活動計画を承認するとともに更なる推進のための決議を行った.
 日本が幹事国を務める AG 2 について,その活動成果に基づき日本提案の NP が承認され ISO/IEC TS23220-6(セキュアエリアの信頼度に関する認証利用の仕組み)として WG 4 で検討が開始されている状況を確認し AG 2 の解散を合意した.また,国際貢献の⼀環として⽇本国ナショナルレポート “公的個人認証サービスの民間利用の拡大” を提出した.
b) 複数 WG にまたがる WI であるヒューマン・インタフェース機能付き IC カードに関し,⽇本はISO/IEC 18328(IC カードに管理されるデバイス)シリーズの論理的側⾯について仮想的なアーキテクチャを提案し貢献してきた.
c) カードの⽤途別耐久性に関する評価試験を定める ISO/IEC 24789(カードサービスライフ)シリーズについて,各種試験方法の検証や新しい試験方法の提案を行い,改正に向けた技術的検討を継続している.
d) ICAO-TAG-NTWG(国際⺠間航空機関・新技術WG)が標準化している IC 旅券(eMRP)の技術レポート(ICAO-TR)作成に外務省と共に積極的に参加し,旅券への近接型⾮接触 IC カード技術の利⽤に関する仕様策定に貢献してきた.大多数の先進国で IC 旅券内の顔データを用いた顔認証による自動化ゲートが導入されており,モーフィング対策等の新たな検討課題が生じている.ICAO の協⼒の下,榊 純⼀WG 3 国内主査が WG 3/TF 4 コンビナを務め試験⽅法の標準化を進めている.ICAO の Digital Travel Credentials(DTC)検討部会では,スマートフォン等への IC 旅券アプリケーションの搭載検討が開始されている.
e) 多くの分野で利⽤されている ISO/IEC 7816-4(IC カード-第 4 部:交換のための構成,セキュリティ及びコマンド)は,⽇本提案の PBO(Perform Biometric Operation)コマンドの追加,高速処理を可能とする日本提案に基づく 2 件の追補を含めた改正が行われ,第 4 部を参照する ISO/IEC 7816 シリーズの他の各部(第 6 部,第 8 部,第 9 部,第 11 部,第 15 部)も改正版が発行されている.
f) IC カード上で全ての⽣体認証処理を⾏うシステムオンカードに関する ISO/IEC 17839 シリーズについて,処理中に発⽣する操作時間待ち等を柔軟に制御できるプロトコルの提案を⽇本から⾏い,IS として発⾏される等実⽤化に貢献している.
g) ISO/IEC 7812(識別カード-発⾏者の識別)シリーズは,カード発⾏者識別番号(IIN)の将来的な番号枠枯渇問題への対応及び IIN 登録管理体制の⾒直しを完了し改正版を発行している.IIN 桁数拡張への実務対応上の検討終了に伴い WG 5 の解散を承認した.⽇本は国内関係者と連携し運用面も含めた意⾒発信や説明資料作成に積極的に関与した.WG 5 から 分離された,IIN の登録管理を行う常設組織としてのAG 1(旧称,SWG 1)は活動を継続している.
h) 近接型⾮接触 IC カード(PICC)に関する⽇本提案の Dynamic power level management(動的電⼒制御)のための機能拡張は,関係する 4 部の追補が承認された.また,インタフェース制御⽤パラメータ・PICC クラス定義の明確化,適合性試験計画等の追加を含む ISO/IEC 14443(近接型⾮接触 IC カード)シリーズの改正に貢献し,近傍型⾮接触 IC カード(VICC)の改正審議にも貢献している.
i) ⾃動⾞運転免許証及び関係書類については,榊純⼀SC 17 国内幹事が WG 10 セクレタリを,中村健一 WG 10 国内主査が WG 10/TF 15 コンビナを務めている.国内では既に流通する全ての運転免許証がIC 運転免許証になっており,海外では欧州を中⼼にIC 運転免許証の導⼊が進められている.スマートフォンでの応用を規格化するmDL(Mobile Driving Licence)の検討開始に伴い国際会議開催数の増加と従来とは異なる業界からの参加が顕著になっている.
j) 光メモリカード及びデバイスについては,既存規格の改正作業が終了し新規規格の提案も無いことが確認されたため,担当の国際 WG 9 を解散し,関係規格を順次スタビライズしている.
k) 国際議⻑・コミッティマネジャ・各コンビナと⼀部の NB(⽇本等)からなる常設組織としての CAG 1では,SC 17 の国際規格が物理的なカード形状を前提にしない利⽤場⾯にも適⽤される近年の状況等にも対応して SC 17 の運営を調整している.
l) 国際会議への対応状況は次のとおりである.
1) SC 17 総会(バーチャル開催, ⽇本から 8 名が出席),参加国数/出席者数: 16 ヵ国,6 団体, ISO CS/計 58 名
2) 各 WG 等の国際会議(バーチャル開催)WG 1(4 回 11 名),WG 3(1 回 3 名),WG 4(12 回 55 名),WG 5(0 回 0 名),WG 8(5回 15 名),WG 10(8 回 25 名),WG 11(5 回10 名),WG 12(6 回 8 名),CAG 1(2 回 7 名),AG 1(0 回 0 名: 別途,案件毎にメール審議を実施),ICAO(3 回 5 名)であった.なお,WG 10 対応については(⼀社)UTMS 協会に事務局業務を委託のうえ合同で推進中である.
m) 規格投票件数及び制定数は次のとおりである.
1) 2020 年度中の投票件数
NP: 1 件,CD: 10 件,DIS: 4 件,FDIS: 8 件,
SR: 14 件,CIB: 13 件,その他: 3 件
2) 2020 年度中の発⾏件数
IS 発行 新規: 0 件,改正: 5 件,追補: 3 件

4. 日本対応/方針

 a) カード及び個人識別用セキュリティデバイスの要素技術以外に,その利⽤システムに係わる標準化が求められている.同時に,利⽤システムからの要求に基づき要素技術としての機能や性能に係わる追加提案が増加しており,これら両⾯に対応している.
b) 情報技術・半導体技術等の⽇本の技術⼒を背景に, 実装の実現性・後⽅互換を含む互換性・拡張性・全体的整合性等の観点からの,詳細なレビューと考察及び実験データに基づき⽇本意⾒の反映を図るとともに,国内外関係機関と連携し国際標準化を推進している.
c) ISO/IEC 7816 シリーズ,ISO/IEC 14443 シリーズ等の主要規格には⽇本提案の技術が反映され国際的にも広く活⽤されている.更に,関係技術や利用システムの伸展に合わせた新規提案を⾏っている.
d) ⽣体認証技術・情報セキュリティ技術・無線インタフェース技術等の関連で,JTC 1 の関係 SC と連携して対応を⾏う場⾯が増加しており,JTC 1/SC 37・ SC 27・SC 31・SC 41・SC 6 等と連携している.
e) ドローン関係では ICAO 及び ISO/TC 20/SC 16等との連携が重要であり,日本は NP 段階から国内関係機関との連携と意見調整に基づき対応している.
f) ⽇本が⽬指す産業競争⼒強化のために,重点TC/SC のひとつとして,担当分野の要素技術及びその利⽤システムに係わる提案を⾏い,前記国際役職を含めて⽇本の技術を国際規格に反映させている.

5. その他

 a) 国際 WG 1〜WG 12 に対応する WG 国内委員会に加え,WG 間及び国内関係機関との連携のためのSWG 委員会を SC 17 直下または WG に設置しており,関連受託事業委員会等を含め連携を強化している.
b) ⽇本意⾒反映のための国際標準化エキスパート養成に努めるとともに,その環境造りを継続している.
c) 関係機関・関係企業の理解と参画を得て,我が国の技術⼒を踏まえた対応の継続により,一般利⽤者も含む各関係者,参画委員自身とその所属組織を含む⽇本にとってのメリット創出と国際貢献を図っている.
d) 2020 年度は Covid-19 のため計画済みの各会議が Web 会議化された.2021 年度も,総会を含めた各国際会議が Web 会議化される状況における日本意見の主張方法を検討しつつ対応していく必要がある.