JIS X 0061原案作成委員会

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第3 種専門委員会

JIS X 0061原案作成委員会

<2024年度委員会活動報告>

委員長 河合 和哉(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

1. 経緯

委員会設立の目的
これまで情報処理の信頼性を担保するためは品質(quality)の観点から国際標準化が行われてきたが,クラウドコンピューティングを始めとした昨今の高度化,複雑化する情報処理技術の信頼性について視野を広めるためにトラストワージネス(trustworthiness)をキーワードとして国際標準化が進んでいる.これらの技術の社会実装の進展に伴ってこの概念の重要性が増していくことが想定されることから,JTC 1として共通して利用できる定義を提供することを目的として,トラストワージネスと関連する用語及び定義を規定する技術仕様書ISO/IEC TS 5723:2022が発行された.本委員会は,ISO/IEC TS 5723:2022に対応するJIS原案を作成することを目的として設立された.

 

JIS原案の作成/改正に至る経緯及び規格内容
ISO/IEC TS 5723は,JTC 1でトラストワージネスに関連する規格開発が複数のSCで始まっており,JTC 1として関連する用語とその定義を共有することが急務とされたことから,技術仕様書として開発された.トラストワージネスについては,今後,日本国内でもこの概念の重要性が増し,JTC 1で開発されたトラストワージネスに関連する規格のJISの制定も進んでいることから,JISとして整合のとれた用語と定義とするため,技術仕様書ではあるもののISO/IEC TS 5723:2022のJIS原案を作成することとした.

2. 作業内容

2.1 作業の進め方
 本技術仕様に採録された用語には,既に他の国際規格で定義された用語をソースとする用語が多数あったことから,既にJISとして翻訳がある用語についてはそれらとの整合を重視して,それらの定義を採用することとした.

 翻訳作業は,対象翻訳箇所当たり二人の委員を割り当てて分担して既存翻訳の調査および既存翻訳がない用語については翻訳案を作成し,基本的に毎月一回の委員会を開催して翻訳案を持ち寄って進めた.

 
2.2 作業中問題となった点
 ISO/IEC TS 5723:2022は技術ドメイン横断的に利用することを目的にトラストワージネスに関する用語を定義した技術仕様書である一方,採録された既存用語には技術ドメイン横断的なものばかりではなく,特定技術ドメインを想定したものが採録されており,技術ドメイン間での整合性を想定していないものが多い.このため,既にJIS化されている用語定義との整合性,お互いの用語定義の意味の食い違い,などの議論に多くの時間を要した.結果,異なるドメインで本技術仕様とは異なる定義がなされている用語についてはドメインに関する注釈を追加し,さらに,原案作成において議論になった“accountability”,“characteristics及びpropertyの訳し分け”“利害関係者(interested party)とステークホルダー(stakeholder)との関係及び違い”について,JIS独自の附属書JA(参考)を設けて理解を助けることとした.
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