JIS X 0037原案作成委員会

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第3 種専門委員会

JIS X 0037原案作成委員会

<2024年度委員会活動報告>

委員長 山田茂史(富士通株式会社)

1. 経緯

1.1 委員会設立の目的
 国際規格であるISO/IEC 2382-37:2022の翻訳JISの原案を作成すること。

 
1.2JIS原案の作成に至る経緯
  本規格の対応国際規格ISO/IEC 2382-37:2022は,2002年に発足したバイオメトリクスに関する国際標準化委員会ISO/IEC JTC 1/SC 37配下の作業部会WG 1において開発された。これまでISO/IEC 2382-37:2012とISO/IEC 2382-37:2017とで,改訂及び用語定義の追加を重ね,ISO/IEC 2382-37:2022では約200個の用語定義がそろい,国内にて普及すべき品質に達したと判断し,JIS化を進めることとなった。そこで今回,JIS X 0037原案作成委員会を設立し、2024年7月から2025年2月までの期間に合計8回開催した。

 本規格はJIS X 0037原案作成委員会が,国際一致規格(IDT)として対応国際規格を翻訳したものである。


1.3 規格内容
 本規格は,人を認識するバイオメトリクスの分野に関連する概念の体系的記述を確立する。また,本規格は,バイオメトリクスに関する既存の国際規格で使用する変形語を,優先用語と照らし合わせて調整することで,この分野における用語の使用を明確にする。

 

2. 作業内容

2.1 作業の進め方
 用語数は約200個あったが,規定の委員会開催数内に審議が完了するように,1回の委員会中で審議すべき用語数を決めた審議スケジュールを委員会に提示した。各月の委員会では,審議すべき範囲の用語・定義の日本訳について委員長・幹事が論点を整理して,事前にメーリングリストにて共有し,それに基づいて各委員がメーリングリストあるいは委員会当日にコメントを提出する方式を用いた。委員会の時間内に結論が出なさそうな用語については,一旦仮の訳をあてて再度審議する手段を取ることで,まずは規格の最後まで確認することを優先した。


2.2 作業中問題となった点
 ・biometrics:  従来biometricsの訳として「生体認証」が広く使われてきたが,biometricsが「認証」用途に限定されてしまい,正確な訳としてことは望ましくなく,カタカナの「バイオメトリクス」にすることが審議により決まった。一方,国内において普及している「生体認証」の扱いについて,JIS原案作成委員会としての見解は示すべきとなった。「生体認証」を使用する場合には,本規格が定める用語群に照らして,どの用語に該当するか適切には把握して注意深く使用する点を言及することとした。引き続き“生体認証”という用語を尊重し,かつ,英語表記の言及をしないことで合意した。


cognizant presentationなどpresentation周りの用語: cognizantの訳に関して「自覚している」「認識している」などの少数意見があげられた。「自覚」は心理学的であり,また「認識」は生体認証で色々な使われ方がされているため,わかりやすい技術用語でまとめていくのがよいとの意見により,下記の表現となった。
  • 37.06.11 cognizant presentation … 理解あり提示
  • 37.06.22 non-cognizant presentation … 理解なし提示
  • 37.06.15 indifferent presentation … 無関心提示


multimodal:「マルチモーダル」では,定義に記載されている①モダリティ②センサー③アルゴリズムの何れかが複数,という意味が表現できていない,という意見から,「多方式(の)」という訳を併記することで合意した。

3. その他

 審議の過程で,対応国際規格の誤りや曖昧な記述が多く見つかった。このため,対応国際規格の次期改訂時に修正や確認を促す18個のコメントをISO/IEC JTC 1/SC 37/WG 1に提出することで,ISO文書の品質向上に繋げる予定である。
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