SQuaRE規格群JIS原案作成委員会

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第3 種専門委員会

SQuaRE規格群JIS原案作成委員会

<2024年度委員会活動報告>

委員長  菊地 奈穂美(沖電気工業株式会社)

1. 経緯

1.1 委員会設立の目的
 本委員会は、SQuaREファミリー規格における品質モデルに関する中核の国際規格ISO/IEC 25010:2023に対応した改正JIS原案(JIS X 25010)、並びにそのISO/IEC 25010に関連が深く同時期に発行された、ISO/IEC 25019:2023のJIS原案(JIS X 25019)及びISO/IEC 25002:2024のJIS原案(JIS X 25002)という、3規格の作成を目的として設立された。
 
ISO/IEC 25002:2024(JIS X 25002):品質モデルの概観及び利用法
ISO/IEC 25010:2023(JIS X 25010):製品品質モデル
ISO/IEC 25019:2023(JIS X 25019):利用時品質モデル
 
 
1.2JIS原案の作成/改正に至る経緯
 システム及びソフトウェア製品の品質及び利用時品質の品質モデルの国際規格ISO/IEC 25010:2011(以下、旧25010対応国際規格という。)は改訂され2023年に発行された。旧25010対応国際規格はその旧規格であるISO/IEC 9126等(JIS X 0129-1等)も含めて2001年から現在までにICT業界で非常に多く利活用されてきている。SQuaREファミリー規格は日本がエディター等として主導的に協力して制改定している。ISO/IEC 25010は、2016年から改訂に向けた議論が行われ、システム及びソフトウェア製品を取り巻く技術の進化、システム構成の複雑化、利用形態の多様化などを考慮して、規定内容が拡張され、3規格に再構成されて、旧25010対応国際規格を置き換えている。対応するJISを同時期に制改正することで、国際規格の体系とJISとの整合も図り、国内の利用者に提供することとした。

 1.3 規格内容
 JIS X 25010:2013の内容には、品質モデルの基本概念、製品品質モデル、利用時品質モデルが規定されていたが、今回制改定の3規格(2025年発行予定)で内容を次のように引き継いだ。


 JIS X 25010 製品品質モデルの規格は、旧25010対応国際規格の製品品質モデルの部分を引継ぎ、規格番号も引継いで、製品品質モデルの対象を様々なタイプのICT製品及び情報システムを含むように拡張した。


 JIS X 25002 品質モデルの概観及び利用法の新規格は、利用時品質モデル及び製品品質モデルの改訂を行うに当たり、利用時品質及び製品品質に加え、データ品質、ITサービス品質、更に将来の他のSQuaRE品質モデルの拡張もカバーできるよう、品質モデル共通の考え方及び活用に関する内容を提供する。


 JIS X 25019 利用時品質モデルの新規格は、システム及びソフトウェア製品に限らず、ITサービス、データ、クラウドサービス、AIシステムなどにも共通するよう、独立した規格として作成された。旧規格の利用時品質モデルは、主に直接利用者を対象としていたが、新規格では、製品又はシステムの使われ方の多様化に伴い、利害関係者の種類ごとに影響が異なることを考慮して拡張した。

 

2. 作業内容

2.1 作業の進め方
 本委員会は、対応国際規格の作成を担当している一般社団法人情報処理学会 情報規格調査会JTC 1/SC 7/WG 6国内小委員会メンバーで構成した。ISO/IEC 25010:2023及びISO/IEC 25019:2023のJIS原案作成を2024年7月~2025年2月に実施し、ISO/IEC 25002:2024のJIS原案作成を2024年10月~2025年5月に実施した。3規格は、旧25010対応国際規格が拡張され再構成されたことから内容的に連動する箇所もあり、翻訳JIS作成の際には矛盾のないことが重要であるため、同じ委員体制で実施した。3規格間での翻訳や表現の整合性確保が必要となるため、2025年1月~2025年5月にその観点でのレビュー及び審議を重点的に行った。


 3規格は、規格間で共通の概念及び表現に加えて、SQuaREファミリーの発行済の他のJIS規格とも概念及び表現の整合性が望ましいため、それらに関しては原文とJISの両方を比較し整合性を取るように努めた。さらに、これら3規格と関連する、JIS Z 8521、JIS X 0160及びJIS X 0170で用いている訳語との整合性について可能な範囲で考慮した。


 解説は、旧JIS X 25010からの変更点が理解しやすいよう、情報を整理して提供した。


2.2 作業中問題となった点
 3規格は、対応国際規格のIDTとして作成したことから、記載内容についての議論はなかったが、翻訳に関して審議の結果、次のとおりとした。


a) 品質特性及び品質副特性の名称について、既存JISでの訳語、世の中で一般に使われている訳語を考慮して、訳語を決めた。片仮名表記で意図が通じにくい場合があると考えられるものには漢字表記を併記した。また、既存の特性名称を最新技術に対応して伝わりやすい表現に変更したものもある。


b) JIS X 25010:2013の表現は、旧25010対応国際規格の英文から変更がない箇所の訳は明確な変更理由がない限り変えない方針とした。ただし、既存JISの翻訳で正しくないと考えられる箇所は、更に適切な訳語に変更した。


c) 対応国際規格中に明らかな間違いを確認した箇所は、プロジェクト エディター及びコンビーナーに確認をとり、委員会にて正しいと考えられる用語へ修正した。


d) 副特性のトラストワージネス(trustworthiness)の名称は新しいため、意味の伝わりやすい適切な漢字名称を併記する意見もあったが別名称の整合までには至らず、JTC 1/WG 13小委員会への問合せを行った上で、既発行のJIS X 22989:2023での名称を採用した。

3. その他

 原案作成委員会は、3規格の作成について、2024年7月以降2025年5月までに、(1)JIS X 25010及びJIS X 25019の作成期間に11回、(2)JIS X 25002の作成期間に11回(うち(1)との同時審議7回)、合計15回開催して取り組んだ。実作業はこれらに加えて、数回の集中作業、個別打ち合わせなどの対応を行う必要があった。取り組みをご支援いただいた原案作成委員会の委員の方々には感謝したい。
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