JIS Q 42001原案作成委員会
第3 種専門委員会
JIS Q 42001原案作成委員会
<2024年度委員会活動報告>
委員長 髙村博紀 (一般財団法人 日本品質保証機構,現在,AIセーフティインスティテュート及び独立行政法人 情報処理推進機構に出向中)
1. 経緯
本委員会は,ISO/IEC 42001:2023のJIS原案(JIS Q 42001)の作成を目的として設立された。
人工知能(Artificial Intelligence,AI)は,深層学習のブレイクスルーにより急激に開発が進められ第3次AIブームを引き起こし,最近では生成系AIの社会への浸透により用途が拡大している。各組織のビジネスにおいてAIを利活用することがますます加速することは不可避であり,そのため,AIに関するマネジメントシステムの構築は組織にとって重要である。また,AI技術が実現する可能性について,技術だけでなく,各国の制度,政策担当者にも大きな関心をもたれており,人工知能関連のガイドラインや法令は,EUのレポートによれば600を超えている。その一方で,様々なガイドラインなどが乱立している状況にあり,AI技術に関するマネジメントを実施している組織であることを対外的に表明してもその内容は組織間で差があり,当該技術に関する標準的な組織の取組みを記載した文書の作成・維持及びそれに基づく組織運営が喫緊の課題となっている。
AIに関係した組織のマネジメントシステムの構築については,従来のITシステムの場合におけるマネジメントシステムだけでは不十分であるという声が多く,新たなマネジメントシステム規格の開発の要望が高かったことから,ISO/IEC JTC 1 SC 42では,規格の開発を推進し,2023年にISO/IEC 42001(Information technology-Artificial intelligence-Management system)が制定された。
我が国においても同様に,AIに関係した組織のマネジメントシステム規格に対する要望が高いことから,今回,ISO/IEC 42001:2023(以下,対応国際規格という。)に基づいてJIS規格を制定し,AIマネジメントシステムに関する指針を与えることとし,本JIS原案作成委員会を設立し作業を実施した。
人工知能(Artificial Intelligence,AI)は,深層学習のブレイクスルーにより急激に開発が進められ第3次AIブームを引き起こし,最近では生成系AIの社会への浸透により用途が拡大している。各組織のビジネスにおいてAIを利活用することがますます加速することは不可避であり,そのため,AIに関するマネジメントシステムの構築は組織にとって重要である。また,AI技術が実現する可能性について,技術だけでなく,各国の制度,政策担当者にも大きな関心をもたれており,人工知能関連のガイドラインや法令は,EUのレポートによれば600を超えている。その一方で,様々なガイドラインなどが乱立している状況にあり,AI技術に関するマネジメントを実施している組織であることを対外的に表明してもその内容は組織間で差があり,当該技術に関する標準的な組織の取組みを記載した文書の作成・維持及びそれに基づく組織運営が喫緊の課題となっている。
AIに関係した組織のマネジメントシステムの構築については,従来のITシステムの場合におけるマネジメントシステムだけでは不十分であるという声が多く,新たなマネジメントシステム規格の開発の要望が高かったことから,ISO/IEC JTC 1 SC 42では,規格の開発を推進し,2023年にISO/IEC 42001(Information technology-Artificial intelligence-Management system)が制定された。
我が国においても同様に,AIに関係した組織のマネジメントシステム規格に対する要望が高いことから,今回,ISO/IEC 42001:2023(以下,対応国際規格という。)に基づいてJIS規格を制定し,AIマネジメントシステムに関する指針を与えることとし,本JIS原案作成委員会を設立し作業を実施した。
2. 作業内容
2.1 作業の進め方
幹事団(委員長と幹事)を形成し,下訳を作成したうえで,委員全体によるレビューを実施した。委員からのコメントに対して計6回の委員会を開催し,意見集約をはかった。また,作業中の審議事項については,委員から意見を賜り,幹事団が解説にまとめた。2.2 作業中問題となった点
今回のこの規格の審議において問題となった点について,特に読者への留意事項となるものを,以下に記載する。本JIS原案では,“マネジメントシステム”,“システム”,“AIシステム”,“ITシステム”,“情報システム”の5種類のシステムが出現する。マネジメントシステム以外については,この規格におけるシステムと読者のシステムとの対応を読者が検討し,決定する必要がある。ITシステムの構成要素としてAIシステムがある場合,AIシステムとITシステムとが組み合わされて一つのシステムを構成する場合など様々な形態が考えられることから,読者は自組織の場合に照らし合わせて,文脈を精査することで対応する必要がある。
B.7.6(データ準備)の管理策 対応国際規格は“shall”を用いた表現であるため,この規格ではIDTとするために要求事項の表現形式とし,“文書化する。”としている。しかし,対応国際規格の附属書Bではこの項目以外の各管理策は“should”を用いた表現となっていることから,この項目についても推奨事項の表現(“文書化することが望ましい。”)とするのが適切であると考えられる。
本JIS原案では,附属書Aに,AIマネジメントシステムに関する要求事項について規定している。対応国際規格では“shall”が用いられており,要求事項の表現形式(“しなければならない”)となっている。一方,附属書Bは,附属書Aを実施する際に推奨される事項を整理したものである。そのため,対応国際規格では,附属書Aに規定されている“shall”の文を“should”に置き換えた文で各管理策として記載されており,この規格では“望ましい”と訳している。このことは,附属書Bに記載されている内容を“しなければならない”わけではないことを意味している。
3. その他
JIS原案作成の作業を進めるにあたり,対応国際規格に対していくつかの課題が発見された。こちらについては国際規格の改訂の際には,日本からのコメントとしてISO/IEC JTC1/SC42/WG1に提出し,規格をさらに良いものとなるよう引き続き貢献していきたい。