SC 40 専門委員会 (ITサービスマネジメントとITガバナンス)

第1 種専門委員会

SC 40 専門委員会(IT サービスマネジメントと IT ガバナンス/IT Service Management and IT Governance)

委員長 岡崎靖子(早稲田大学・グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所)

1. スコープ

 この SC は,組織の中で経営の観点から IT をどう有効にかつ効率よく活用していくかを扱う「IT ガバナンス」と組織内でどう IT を効率的に運用するかを示す「IT サービスマネジメント」を担当する.2013年 11 月の JTC 1 総会で設立が承認され,2014 年 2月に活動を開始した.IT ガバナンス,IT サービス管理(ISO/IEC 20000 シリーズ)及び IT を使ったビジネスプロセスアウトソーシングシリーズ)に関連する標準,ツール,枠組み,ベスト(ISO/IEC30105プラクティス及び関連する文書の作成を行う.IT 活動領域には,監査,ディジタルフォレンジック,ガバナンス,リスクマネジメント,アウトソーシング,サービス運用及びサービス維持が含まれるが,SC 27及び SC 38 の適用範囲及びその既存の業務によってカバーされる項目は除外される.

2. 参加国

 幹事国は豪州.2016 年 11 月より議長は Jan Begg氏(豪),コミッティ・マネージャは Suba Ananth氏(豪)である.参加国は P-メンバ 36 か国(主な参加国は,豪,ブラジル,カナダ,中国,デンマーク,オランダ,インド,韓国,フランス,アイルランド,南アフリカ,スペイン,メキシコ,ルクセンブルク,イラン,ポルトガル,英国,米国,日本),O-メンバ 21 か国である.WG 1 のコンビーナは 2018 年 6月より Gyeung-min KIM 氏(韓),WG 2 のコンビーナは 2017 年 6 月より Suzanne Van Hove 氏(米),WG 3 のコンビーナは 2017 年 6 月より榎本義彦氏(日本アイ・ビー・エム)が担当している(コンビーナの正式任期は,各翌 1 月から).総会は,当初 2020年 6 月にロンドンで開催される予定であったが,新型コロナウィルス感染拡大の影響により,2020 年 8 月にオンラインで開催された.WG の中間会合は 11 月にオンラインで開催された.2020 年度は,IS が1件(ISO/IEC 38506)発行された.なお,現在開発中の ISO/IEC 38503(IT ガバナンスのアセスメント)のエディタを原田要之助(情報セキュリティ大学院大学名誉教授)が,ISO/IEC TS 30105-6(ビジネスプロセスアウトソーシング・ライフサイクルプロセス-リスクマネージメントの手引)と ISO/IEC 30105-4(ビジネスプロセスアウトソーシング・ライフサイクルプロセス-用語とコンセプト)改定版のコ・エディタを清水裕子が担当している.

3.トピックス

 情報処理学会と情報規格調査会の主催で,2021 年2 月 5 日に SC40 専門委員会主体の短期集中セミナー「DX時代のITガバナンスとITサービスマネージメント ~国際標準化への取り組み~」をオンラインで開催した.講演者らも含んで 127 名の参加があった.講演テーマと講演者は次のとおり(敬称略).
・「国際標準化活動の重要性と日本の取り組み」(林巧,経済産業省産業技術環境局国際電気標準課)
・「IT サービスマネージメントと IT ガバナンス ~国際規格の動向と国内対応~」(岡崎靖子,SC40 専門委員会委員長,早大グローバルソフトウエアエンジニアリング研究所)
・「ISO におけるガバナンス関連の規格 ISO/IEC 38500シリーズなどの動向 ~ITからDXに向けたガバナンスの展開~」(原田要之助,WG1 小委員会主査兼 SC42/JW1 コンビーナ,情報セキュリティ大学院大学名誉教授)
・「経営陣からみた AI ガバナンス ~ISO/IEC 38507 関連~」(小倉博行,SC42/JWG1 小委員会主査,日大)
・「デジタル時代を支える IT サービスマネジメント~ISO/IEC 20000 シリーズの概要~」(八木隆,WG2小員会主査,日立)
・「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスと ISO/IEC 30105 シリーズについて」(清水裕子,WG3 小員会主査)
 SC40専門委員会の全WGでのセミナーは今回が初めてで,加えて,情報規格調査会初のオンライン形式でのセミナーであったが,関係者のご協力により,無事に開催できた.

4. 日本対応/方針

a)WG 1(IT ガバナンス:Governance of IT)
 WG1 では,日本が提案した ISO/IEC 38503 がCD2 投票を経て DIS 投票まで進んだ. 本規格は,組織の経営層が IT を利用して適切な経営を実施しているかについて評価するガイドラインを提供している.
 また,ISO/IEC 38500(IT ガバナンス)シリーズの改定プロジェクトが始まっており,WD の内容を議論中である.ISO/IEC 38500 は,経済産業省のシステム管理基準(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/sys-kansa/h30kaitei.html)で参照されるなど,現在のモデルが国内で利用されているため,日本は,改訂版ではモデルの形は大きく変えないように主張している.
 SC40 と SC42 の JWG(共同 WG)で開発している ISO/IEC 38507(人工知能利活用の組織に与えるガバナンスによる影響)に関しては,2020 年 5 月に当規格を担当する国内組織として,SC42 専門委員会の下に SC42/JWG1 小委員会が発足しており(主査:小倉博行氏),この委員会と密に連携して活動している.また,2020 年 5 月に JWG(SC42/JWG1)の新コンビーナに原田要之助氏が就任し,日本の体制が強化されている.2020 年 8 月に CD 投票があり,日本は,CD に技術的課題がまだ多く含まれていたため,反対投票した.なお,CD 投票までは SC40 と SC42がそれぞれ投票し,DIS 投票からは SC42 のみが投票することになっている.   
 WG1 では,上記の他に ISO/IEC TS 38505-3(データ分類のガイドライン, 2020 年 7 月に 38508 から 38505-3 に規格番号変更)の WD を開発中で,さらに,ISO/IEC TS 38508(エコシステムを形成する組織にまたがる共用デジタルサービスプラットフォームの利用に関するガバナンスの影響)の開発も始まった.
b)WG2(IT サービスマネージメント:Service management – Information technology)
 WG2 では,2018 年9月に発行された改訂版ISO/IEC 20000-1(サービスマネジメントシステム要求事項)の内容に沿って,ISO/IEC TS 20000-5(ISO/IEC 20000-1 の実施手引き)と ISO/IEC TS 20000-11(ISO/IEC 20000-1 と ITIL®の関係についての手引き)の改訂版の開発が始まった.日本は,これらのパートは TR として開発するようにコメントしたが,投票の結果,賛成多数で TS として開発することになった.ISO/IEC TS 20000-12(ISO/IEC 20000-1 と CMMI-SVC®の関係についての手引)の改訂版の開発も一旦は始まったが,著作権の関係でキャンセルされ,合わせて 2016 年に発行されたISO/IEC TR 20000-12 も廃版となった.
 また,後述する WG4 の廃止により,WG2 の名称が上記 b)の括弧内のように変わった.
c)WG3(IT を使用したビジネスプロセスアウトソーシング:IT Enabled Services-Business Process Outsourcing(ITES-BPO))
 WG3 では,ISO/IEC 30105(ITES-BPO ライフサイクルプロセス)シリーズを拡張する ISO/IEC TS 30105-6(リスクマネジメントに関するガイドライン)の開発が始まった.同パートは,TR として開発が進んでいたが,途中で TS に変更することになり,開発しなおされたものである.さらに ISO/IEC 30105-8(継続的なパフォーマンスの改善)の CD 投票と 2nd CD 投票も実施した.
 また,2020 年1月に ISO/IEC 30105 シリーズ最初の JIS となる JIS Y 30105-1(プロセス参照モデル)を発行した.2020 年度は,JIS Y 30105-2(プロセスアセスメントモデル)原案作成を行った.
d)WG4(サービスマネジメントのインフラ:ITService management of infrastructure)
 WG4 は, 2017 年に ISO/IEC TR 22446(IT を使ったサービスの継続的パフォーマンス改善)を発行したが,その後は目立った活動がなかったため,2020年 8 月の SC40 総会にて,閉鎖されることになった.WG4 の担当規格は,WG2 に移管された.

5. その他

a)担当規格一覧
(WG 1)
ISO/IEC 38500:2015,ISO/IEC TS 38501:2015,ISO/IEC TR 38502:2014,ISO/IEC 30121:2015,ISO/IEC TR 38504:2016,ISO/IEC 38505-1:2017,ISO/IEC TR38505-2:2018,ISO/IEC 38506:2020,開発中:38503,TS 38508 ,TS 38505-3,38507
(CD 投票まで)
(WG 2)
ISO/IEC 20000-1:2018,ISO/IEC 20000-2:2019,ISO/IEC 20000-3:2019,ISO/IEC TR20000-5:2013,ISO/IEC 20000-6:2017,ISO/IECTR 20000-7:2019,ISO/IEC 20000-10: 2018,ISO/IEC TR 20000-11:2015,実践ガイド:2019ISO/IEC TR 22446:2017
開発中 :TS 20000-5 ,TS 20000-11
(WG 3)
ISO/IEC 30105-1:2016,ISO/IEC 30105-2:2016,ISO/IEC 30105-3:2016,ISO/IEC 30105-4:2016,ISO/IEC 30105-5:2016,ISO/IEC TR30105-7:2019
開発中 :TS 30105-6,30105-8

URL
https://www.iso.org/committee/5013818.html