SC 23 専門委員会 (情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体)

第1 種専門委員会

SC 23 専門委員会 (情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体/Digitally recorded media for information interchange and storage)

 委員長 入江 満(大阪産業大学)

1. スコープ

 SC 23 専門委員会(以下当委員会)は ISO/IEC JTC1/SC 23(以下 SC 23)に対応した国内審議を担当する委員会である.
 SC 23 は,情報交換用ディジタル記録媒体(光記録方式,ホログラフィック記録方式,磁気記録方式の媒体 及びフラッシュメモリ)の標準化を担当しており,その活動は以下の技術を包含する.
  • データのロスレス圧縮アルゴリズム
  • ボリュームとファイル構造
  • ディジタル保存媒体の期待寿命推定方法
  • ディジタル保存媒体のエラー監視方法

2. 参加国

 SC 23 は,日本,韓国,中国,オランダ,ロシア, 及びスイスの 6 カ国の P メンバと,その他 22 カ国のO メンバで構成されており,議長及び幹事国は日本が担当している.
 光ディスクの物理規格,期待寿命推定試験規格,マイグレーション(データ移行)規格,ファイルシステム等の国際標準化に関し,SC 23 の国際レベルでの活動は全て日本(当委員会)が主導して行っており,新規の国際規格化提案や,メインエディタによる規格原案の作成等についても日本が主導して行うことにより国際標準化を推進している.また,Ecma TC31(Ecma International),IEC/TC100 や BDA(Bluray Disc Association)等,日本企業が主要メンバである外部の国際規格化団体や JIS 化を担当している光ディスク標準化部会(一般社団法人光産業技術振興協会)さらに磁気テープの国内専門委員会であるテープストレージ専門委員会(一般社団法人電子情報技術産業協会)とも連携しながら活動を進めている.

3.トピックス

 当該年度は JTC 1/SC 23 では 6 月に日本での総会が予定されていたが,コロナ禍の影響で 8 月に延期され、オンライン会議として実施された。主なトピックスは以下のとおりである.

a)長期データ保存用光ディスク媒体のデータ移行方法の改定規格提案
 
記録形 CD, DVD, BD をデータの長期保存用途に用いるデータの移行規格の改定提案を日本から行った。規格ユーザの対象者を業務用途(プロフェッショナル)としている現行の ISO/IEC 29121:2018(3rd edition)に対して,データ移行判定の基準、評価方法等を一部見直し、一般ユーザが容易に取り扱えるにするための 4th edition 改定である。改定審議が終了し、改定版は 2021 年 1 月 28 日に発行され、当該プロジェクトは完了した。

  • ISO/IEC 29121:2021, Information technology – Digitally recorded media for information interchange and storage – Data migration method for optical disks for long-term data storage

b)記録形 BD ディスクの物理規格(4 件)の改定
 4 つの記録形 BD ディスク規格(ISO/IEC 30190: 単層/2層 追記形,ISO/IEC 30191:3 層/4 層及び 3層両面 追記形,ISO/IEC 30192:単層/2層 書換形,ISO/IEC 30193:3層 書換形)に対して,BDA(ブルーレイディスクアソシエーション)にて制定された4K / 8K 放送録画を可能とする Amendment を実施するプロジェクトを日本から提案した.
 ISO/IEC 30190, ISO/IEC 30191, 及び ISO/IEC30192 は Amendment 1 を 2019 年 6 月に発行した。その後,追補内容に不備がある等の理由により 最終的には全ての規格に対して全文改定(Edition 3) を行う作業を進め,ISO/IEC 30190(Ed.3), ISO/IEC 30191 (Ed.3)および ISO/IEC 30192(Ed.3)が 2021 年 1 月に発行された。一方, ISO/IEC 30193(Ed.3) : 3 層 100GB BD Rewritable disk は, 2020 年 3 月に発行され、その後 2020 年 7 月に corrected version として再版されたが,その後,技術的誤りを修正するために現在,Edition 4 策定のプロジェクトを実施している.

  • ISO/IEC 30190:2021 - Information technology -- Digitally recorded media for information interchange and storage -- 120 mm Single Layer (25,0 Gbytes per disk) and Dual Layer (50,0 Gbytes per disk) BD Recordable disk
  • ISO/IEC 30191:2021 - Information technology -- Digitally recorded media for information interchange and storage -- 120 mm Triple Layer (100,0 Gbytes single sided disk and 200,0 Gbytes double sided disk) and Quadruple Layer (128,0 Gbytes single sided disk) BD Recordable disk
  • ISO/IEC 30192:2021 - Information technology -- Digitally recorded media for information interchange and storage -- 120 mm Single Layer (25,0 Gbytes per disk) and Dual Layer (50,0 Gbytes per disk) BD Rewritable disk
  • ISO/IEC 30193:2020 - Information technology -- Digitally recorded media for information interchange and storage -- 120 mm Triple Layer (100,0 Gbytes per disk) BD Rewritable disk 

 c)光ディスク論理フォーマットの改定
 
光ディスク論理フォーマット ISO9660 の有効活用と標準規格の維持を目的として Joliet format (Microsoft 作成)を追加する改定を実施した.Joliet Format は現在,世界中で Window OS に広く使用されているが,Microsoft も管理できていない状態である.このため規格の記述文書が喪失されれば,ユーザ間や市場で混乱が生ずる恐れのあることから,ISO9660 へ Joliet Format そのものを追加する DAmd 2 (Draft Amendment 2)を Microsoft からの許諾を得て2020 年 4 月に発行した。
 また DAmd2 承認の際,ISO 9660:1988 は 30 年前に発行からの古い規格であり、現在のユーザへの利便性を確保するために,これまでの 2 つの追補を含めた new edition を現在の ISO の規格発行手続き(XML化等)に準拠して策定するように ISO 事務局から提案があり,現在、新たな統合規格の策定に取り組んでいる。

  • ISO 9660: 1988,Volume and File Structure of CD-ROM for Information Interchange

4. 日本対応/方針

 次年度も,SC 23 の国際レベルでの活動は議長国である日本が主導して標準化を推進していく.また,予想される新規案件に関しても,必要に応じてEcma TC 31 等の外部の国際規格化団体と連携しながら主導的に標準化活動を進めていく. 

5. その他

 その他の標準化活動として,
a)光ディスクを用いたオーディオアーカイブ規格IEC 62702-1-1(DVD を用いたオーディオアーカイブ規格),IEC 62702-1-2(BD を用いたオーディオアーカイブ規格)に関し、規格の改定作業が行われており規格策定団体 JEITA (IEC/TC 100)と協調して技術的,エディトリアル的な検討協力を継続している.
b) 情報処理用語“光ディスク関連”JIS 検討 情報規格調査会において ISO/IEC 2382:2015(光ディスク関連は ISO/IEC 2382-12「データ媒体、記憶装置及び関連装置」)に対応する JIS 規格の用語を網羅した情報処理用語のデータベースの作成の検討が開始された。「既存の情報処理用語規格 JIS X 0001 から 0032 の各々を廃止し、ISO/IEC 2382 に対応した統合版を作成」、「データベースの無い状態で JIS 情報処理用語の他規格との重複の有無の確認」という基本的対応方針について検討している。

 近年、ビックデータとしてデジタルデータ普及が急激に増大し、そのストレージとしてデータセンタ等でのコールドデータ保存に重点が置かれている。今後は光ディスクのアーカイブ用途等のよりユーザ 視点に近い新規プロジェクト探索及び議論を行い,アプリケーション対応システム規格等の標準化にも注力していきたい.