ITES-BPO ライフサイクルプロセス規格群JIS原案作成委員会

第3 種専門委員会

ITES-BPO ライフサイクルプロセス規格群(第2部)JIS 原案作成委員会完了報告

委員長 清水裕子(ISO/IEC JTC 1/SC 40/WG 3 国内委員会 主査)

1. 経緯

1.1 委員会設立の目的と経緯

 ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)は労働生産性の向上に有効であるとしながらも、日本における BPO 利用は欧米に比べて不十分である。その要因の一つとして、BPO 事業者やその信頼性に関する情報が不足している点が挙げられる。一方、2016 年 11 月に、IT を使用した BPO(ITES-BPO)ライフサイクルプロセスに関する国際規格(ISO/IEC30105 シリーズ)が発行された。BPO 分野における用語やプロセスの標準化が行われていない我が国にとって当該国際規格の導入は重要であるが、事業者の規模は多様で国際規格のままの利用ではハードルが高いこと、また、事業者と顧客企業との間、又は協業相手との間で標準の理解に齟齬が生じることのないよう、JIS 化が必要であった。
 2019 年度の 30105-1 プロセスリファレンスモデル(PRM)に続き、30105-2 プロセスアセスメントモデル(PAM)を JIS 化すべく委員会を設立、活動を行った。

1.2 規格内容

1 適用範囲
2 引用規格
3 用語及び定義
3A ITES-BPO プロセスアセスメントモデル(PAM)
3.1 概要
3.2 ITES-BPOP PAM の構造
3.3 アセスメント指標
3.4 プロセス能力の測定
4 プロセス及びプロセスパフォーマンス指標(レベル1)
4.1 概要
4.2 ITES-BPO ライフサイクルプロセスのための基本プラクティス(BP)
5 プロセス能力指標(レベル1~レベル 5)
5.1 概要
5.2 プロセス能力レベル及びプロセス属性
付属書 A(参考)プロセスアセスメントモデルの適合性
付属書 B(参考)成果物の特性
付属書 C(参考)ISO/IEC20000 シリーズと ISO/IEC30105 シリーズとの相関

2. 作業内容

2.1 作業の進め方

 第1部と同様に、委員会設立後、一部の委員で分科会を組成し当該委員が集合してレビューを行った。その上で委員会にて確認レビューを行った。また、訳の統一を図るため、レビューを行う際に、用語の対訳表を作成し確認を行った。さらに、カタカナで使用する用語については、その説明を解説に記載した。

2.2 作業中、問題となった点

a) 用語の統一について
 いくつかの用語について揺らぎが発生し、審議の上、統一を図ったが、一部、文脈により使い分けることとした。また、英語と日本語との単語の持つ意味は1:1と言い切れないため、カタカナで表記した方が分かりやすい用語もあり、審議の上、統一を図りつつカタカナを使用することとした。
 幾つかの用語については議論が分かれた。“Stakeholder”について、“利害関係者”と訳しているが、“ステイクホルダ”とした方が分かりやすいという意見が出た。しかし、JIS Y 30105-1 で“利害関係者”としており、”利害関係者“を選択することとした。
 ITES-BPO の E にあたる”enabled”について、“使用した”より”活用した”が相応しいという意見が出された。こちらも JIS Y30105-1 で”使用した“としている点、及び時間をかけて検討した結果”使用した“にした点などから”使用した“のままとした。

b) 成果物(Work Product)の網羅性について(箇条4)
 成果物のインプット、アウトプット欄への記載内容の網羅性に疑問が残るという議論があった。また一方で、子細すぎる事項の成果物が記載されているように見え、網羅性を追求しようとすると、際限なくリストアップされていく可能性も出てくるという意見があった。さらに、ソリューションから始まる流れのあるプロセス間で、前工程のアウトプットが次工程のインプットにつながっていないことへの違和感があるという意見が出された。
 対応国際規格の開発中に同様の議論があり、冒頭に“The set pf indicators included in this document is not intended to be an all-inclusive set nor is it intended to be applicable in its entirety. Supersets and subsets that are appropriate to the context and scope of assessment should be selected. (この規格に含まれる一連の指標は、包括的であることを意味するものではなく、その全体を適用することを意味するものでもない。アセスメントの状況及び適用範囲に適した上位集合及びサブセットを選択するのがよい。)”と記載していることもあり、審議の結果、JIS 原案作成委員会での議論は継続せず、ISO/IEC JTC1 SC40/WG3 へのフィードバックを行うこととした。

c) SEN2 イノベーションマネジメントプロセスの有効性について(箇条4)
 JIS Y 30105-1 の原案作成委員会のときにも議論となったが、イノベーションが管理によって生まれるのか、という疑問が残る、という意見が出された。審議の結果、イノベーションそのものが生まれるかという点で議論はあるが、イノベーションを管理するプロセスを置くことは重要考え組み込まれている、という観点で、国際規格通りとすることとした。この問題についても ISO/IEC JTC1 SC40/WG3 へのフィードバックを行うこととした。

3. その他

 第 1 部、第 2 部と進めてきたが、第 3 部までそろって主たる内容全体が揃うこととなる。第3部測定フレームワーク及び組織成熟度モデル、また、用語と概念を整理した第 4 部の JIS 原案作成を 2021 年度に計画している。
 また、議論を進める中で、委員の間で規格の理解が進んできたと考えている。参加して頂いた委員諸氏の力を借りて、規格の活用を進める活動を推進していくことが望ましいと感じている。